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会長声明・決議・意見書(2014年度)

少年事件におけるインターネットでのプライバシー侵害を憂慮する会長声明

2015年03月27日更新

本年2月、川崎市において中学1年生の男子が殺害される事件が発生した。本件では、被疑者らが逮捕される以前から、インターネット上で「犯人」とされる少年少女の実名及び顔写真などの情報が掲載され、更にそれが閲覧者によって拡散されるという状況が生じている。

インターネットは、個人による主体的な情報発信を可能とする媒体であり、かつ、発信者の匿名性も相まって、真偽不明な情報が不特定多数者へ急速に拡散する可能性が高い。更に、いったん情報が拡散してしまうと、掲載情報の削除等による原状回復が事実上不可能であるため、名誉侵害やプライバシー侵害が生じた場合の被害救済が極めて困難である。

この点、本件では「犯人」とされる少年少女の実名及び顔写真などの情報が広く拡散しているところ、本件で逮捕された被疑者らはいずれも未成年であり、その可塑性に鑑みてプライバシー保護の要請が強く働くものであって、たとえ個人による情報発信でも無限定に許容されるものではない。このことは、少年事件において本人を推知できるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載することを禁じた、少年法第61条の趣旨からも明らかである。

まして、本件とはまったく無関係の少年少女が「犯人」として実名や顔写真を掲載されたとすれば、プライバシー侵害だけでなく重大な名誉侵害となることは明白であり、かつ、その被害回復は著しく困難となる。

かかる深刻な権利侵害を容認することは到底許されず、個人による情報発信であっても、民事上の損害賠償責任や刑法の名誉毀損罪の責任を問われる可能性が高い。

インターネットでの情報発信は、それが個人によるものであっても、発信の適否・要否・影響・効果等を慎重に吟味してなされるべきである。
当会は、本件において「犯人」とされる少年少女の実名及び顔写真などの情報が拡散し続ける現状に強い憂慮を表明するとともに、かかる情報の発信について社会全体の自制を求める。

2015(平成27)年3月26日

横浜弁護士会     

 会長 小野  毅 

 

 
 
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