2015年03月13日更新
経済産業省及び農林水産省は、本年1月23日、商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令(以下「本省令」という。)を定めた。本省令は、同規則第102条の2を改正して、顧客が65歳未満で一定の年収又は資産を有する者である場合に、顧客の理解度を確認するなどの要件を満たしたときは、不招請勧誘禁止の例外とすることを規定したものである。
しかし、顧客が上記要件を満たすかどうかの確認は、まさに、勧誘行為の一環としてなされるものであるから、本省令は、商品先物取引契約の締結を目的とする勧誘を無制約に許容するものであって、事実上不招請勧誘を全面的に解禁するに等しいものである。
また、本省令では、上記要件の確認方法として、顧客に年収や資産の申告書面を差し入れさせたり、書面による問題に回答させて理解度の確認を行う等の手法を示しているところ、これらはいずれも、既に多くの商品先物取引業者によって採用されているものである。しかし、実際には、業者が顧客を誘導して事実と異なる申告をさせたり、正答を教授するなどの行為が蔓延しているのであって、これらの手法に委託者保護の実効性があるとは到底評価できない。
従って、本省令は、透明かつ公正な市場を育成し委託者保護を図るべき商品先物取引法(第214条第9号)の趣旨とは相容れず、同法の委任の範囲を逸脱したものと言わざるを得ない。そもそも、長年にわたり、商品先物取引による深刻な被害が問題となっており、度重なる行為規制強化によってもトラブルが絶えなかったことから、不招請勧誘禁止規定は導入されたのであり、仮に、不招請勧誘を事実上解禁するに等しい本省令が施行されれば、商品先物取引による被害が再び増大することは明らかであり、消費者保護の観点から到底許容することができない。
当会は、本省令を定めたことに強く抗議するとともに、本省令を施行することなく廃止することを求めるものである。
2015(平成27)年3月12日
横浜弁護士会
会長 小野 毅
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