2015年03月13日更新
本年2月7日に、当会会員弁護士の所属する法律事務所に対し、約8時間に431枚の送信者不明のファクシミリが送り付けられ、送信データがファクシミリのメモリー容量の限度を越える事態となって通常のファクシミリ受信が不能となるなど、同事務所の業務が妨害されるという事件が起きた。ファクシミリの内容は、この弁護士の依頼者である従軍慰安婦に関する記事を書いた朝日新聞元記者に対する中傷、その家族のプライバシーに触れるもの、従軍慰安婦問題に対する揶揄などであった。さらに同月17日にも、同様なファクシミリ送信が開始されたため、同事務所ではファクシミリ機から用紙を引き抜いて対応せざるをえなかった。
この元記者に関しては、2014年5月以降その勤務先の北星学園大学に対し、学生に危害を加える旨脅迫したり、元記者の解雇を迫る事件が起きているが、被害を受けた上記弁護士は、週刊誌発行会社等を被告とする名誉毀損の損害賠償等請求事件の原告元記者の弁護団の事務局長を務めている。
そもそも、この元記者と勤務先の大学に対するこのような脅迫・強要は、直近でもこの2月にも続いている。このような行為は、脅迫罪・強要罪にあたることはもとより、大学の自治をも脅かすものであって許しがたい違法行為である。また、インターネット上には、同記者のみならずその家族についても脅迫的な書き込みがなされている。このような行為は、元記者の勤務する大学や家族まで巻き込んで、元記者の表現の自由、報道の自由を暴力的な形で攻撃するものであり、到底看過できないものである。関係機関は、一刻も早い厳正な法的措置をとるとともに、被害の拡大を防止すべきこと、論を待たない。
この弁護士に対する業務妨害は、違法かつ悪質な嫌がらせ行為に他ならない。弁護士は、裁判での代理人として行動しているものであり、依頼者の人権を守るための行動である。このような代理人弁護士に対する悪質な妨害行為は、暴力的な行為によって自分の意見を実現しようとするものであり、裁判制度の否定であるとともに、基本的人権の擁護と社会的正義の実現を使命とする私たち弁護士に対する重大な挑戦であり、断じて許されるものではない。このような手法が許容されるならば、法というルールによって紛争を解決するという社会的仕組自体がその存立の基盤を失うことにつながる。
私たち横浜弁護士会は、今後ともこのように弁護士業務妨害に屈することなく、その対策に一層取り組むことを表明するとともに、このような暴力的な攻撃を直ちに中止させるために、関係機関に対し一刻も早く厳正な法的措置を求めるものである。
2015(平成27)年3月12日
横浜弁護士会
会長 小野 毅
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