2014年12月12日更新
2013(平成25)年12月6日に成立した「特定秘密の保護に関する法律」(以下「特定秘密保護法」という)は、本年12月10日に施行された。
特定秘密保護法は、行政機関が、外交・防衛等に関する情報のうち特に秘匿することを必要とする情報について、「特定秘密」と指定し、故意の漏えい行為のみならず、過失による漏えい、漏えいの未遂、漏えい行為の遂行の教唆、共謀、扇動等の行為を禁止し、その違反に対しては最高で懲役10年の刑罰を科すというものである。
しかし、この「特定秘密」の範囲は極めて広範かつ不明確で、恣意的な秘密指定の危険があり、何が「特定秘密」であるかを事前に知ることはできないこと、ジャーナリストや市民が情報を取得しようとする場合に萎縮効果が生じること、適性評価制度により重大なプライバシー侵害が生じるおそれがあること、秘密指定の適正等をチェックするために設置予定の第三者機関はいずれも実効性のある権限を欠き、独立性があるとも言い難いなど、第三者機関として不十分であること、刑罰を決める裁判手続において「特定秘密」の内容が法廷に提出されることは予定されておらず、被告人、弁護人が「特定秘密」の内容を知ることなく公判手続が行われる可能性があることなど、表現の自由、知る権利、プライバシー権、罪刑法定主義、適正手続などの面から重大な問題がある。
当会は2013(平成25)年11月13日付「特定秘密保護法案に反対する会長声明」において同法の成立に反対し、さらに国会における拙速な法案審議によって、特定秘密保護法が成立したことに対しても、当会は同年12月11日付「特定秘密保護法の強行採決に抗議する会長声明」で抗議を表明した。
また、国際人権(自由権)規約委員会は、本年7月24日、日本政府に対して、秘密指定には厳格な定義が必要であること、ジャーナリストや人権活動家の公益のための活動が処罰の対象から除外されるべきであることなどを勧告している。
更に、この間、多くの市民、マスコミ、研究者等も、強い危機感をもって特定秘密保護法の問題点を指摘し続けている。
これらの意見に耳を傾けることもなく、本年10月14日には、特定秘密保護法の運用基準が閣議決定されたが、運用基準によっても、特定秘密保護法の問題点は残されたままであり、法律の施行によって、市民の知る権利と民主主義社会を危機に陥れる可能性が高い。
特に、本年7月1日、内閣は、これまでの憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使が憲法9条の下で認められる「自衛の措置」としての武力の行使であるとする閣議決定を行ったが、その武力行使の要件の存在を裏付ける事実については、防衛や外交に関する「特定秘密」に指定される可能性があり、市民、国会が要件の存在について十分な検討ができないまま、内閣が集団的自衛権としての武力の行使を決定してしまう危険性がある。
当会は、改めて本年12月10日の特定秘密保護法の施行に抗議し、その速やかな廃止を求めるとともに、今後とも同法の運用を厳しく監視していく決意を表明する。
2014(平成26)年12月11日
横浜弁護士会
会長 小野 毅
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