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司法予算の大幅増額を求める会長声明
2014年07月11日更新
2001年に出された司法制度改革審議会意見書は、この司法制度改革を実現するために、裁判所等の人的物的体制を充実させ、司法に対する財政面の十分な手当が不可欠であるとし、政府に対して、必要な財政上の措置について、特段の配慮を求めた。ところが、その後の司法予算(裁判所予算)は、裁判員裁判対策の点を除けば減少を続け、国家予算に占める割合は概ね0.3%台で推移している。平成26年度予算は約122億円の増額となっているが、給与特例法の失効に基づく人件費の増額分約171億円を含んだものであるから、実質的には約49億円の減額である。
このような政府の措置は、意見書が求めた財政上の特段の配慮を、政府が怠ってきたことであり、国民の裁判を受ける権利(憲法32条)を実質化する責務を果たしてこなかったと評されるものである。政府が、「安全安心な社会」を目指すのであれば、国民の身近にあって、利用しやすく、頼もしい司法を全国各地で実現すべく司法予算の増大を図らなければならない。
近年、家事事件は一貫して増加し、調停事件は多様化、複雑化が進み、面会交流事件でも難しい事件が増加している。成年後見事件の激増は誰の目にも明らかである。裁判官や書記官は本来自ら行うべき申立内容の確認や後見業務の打合せなどを参与員に依頼するなど、多忙を極めている。裁判官及び書記官、職員などの人的側面、調停室等の増設や支部、出張所の新設など物的側面について抜本的強化が必要である。家庭裁判所関連の予算については、飛躍的な拡充が必要不可欠である。
一方で、家庭裁判所以外の裁判所等の予算が減少に転じていることも問題である。なるほど、消費者金融事件・破産事件の減少等によって、地方裁判所などの取扱事件数は減少している。しかしながら、元々裁判官の勤務の過酷さは異常な状態であり、事件数の減少があったとしても、その異常さが解消されるほどまでには至っていない。その為に審理時間は逆に長期化している。また、書記官や職員への権限の大幅委譲がなされているため、書記官・職員の繁忙さは増加の一途となっている。地方裁判所等の予算について現在も大幅な増加が必要な状態は変わっていないのである。各地で強い要望が上がっている労働審判を実施できる支部の拡大など、国民の強い要望のある基盤の整備を必要とする点も少なくない。
国家財政が悪化している現状においては、司法予算を大幅に増加することは難しいとの意見がある。しかし、もともと、司法予算があまりにも小さかったため、司法の使い勝手が悪く、その改善を図るべく、小さな司法から大きな司法を目指し、司法制度改革審議会意見書の提言がなされたのである。国家財政の増減にかかわらず司法予算の増加を図らなければならないはずである。最高裁判所においても、限られた予算の範囲でやりくりするのではなく、今よりはるかに多い司法予算が必要であることを社会に向かって大きく訴えるべきである。
神奈川県に限ってみても、従前からの大幅な人口増加にもかかわらず、それに見合うような裁判所の人的物的施設の規模の増加は図られてこなかった。たとえば、相模原市、横浜北部や川崎北部など人口増加の著しい地域に対する司法サービスは不十分であり、当会はそれに対応するための「神奈川司法計画2013」などを発表してきた。その実現のためにも、司法予算の大幅増額が必要不可欠である。
折から、平成27年度予算の概算要求が検討される時期を迎えるが、最高裁判所においては、大幅な司法予算の増額を要求すべきであり、財務省あるいは政府においては、それを受けて大幅な司法予算の増加を認めるべきである。
2014(平成26)年7月10日
横浜弁護士会
会長 小野 毅
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