2014年07月11日更新
本年6月26日、大阪拘置所において死刑確定者1名に対する死刑が執行された。
谷垣法務大臣になって5度目の死刑執行であり、合計9名の死刑が執行されたこととなる。
日本弁護士連合会は、2011年10月に開催された人権擁護大会において「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を採択し、2013年2月には、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑制度に関する検討課題について国民的議論を行うための有識者会議を設置し、死刑制度とその運用に関する情報を公開すること、そのような議論が尽くされるまですべての死刑の執行を停止することを求めてきた。しかし、残念ながら、死刑制度に関する国民的議論への過程が進んでいるようにはみえない。
死刑執行については、多くの情報が非公開とされており、秘密主義との批判を免れない。今回死刑が執行された死刑確定者は、死刑確定後わずか1年11ヶ月で執行されたが、過去10年間の平均5年6ヶ月と比べ、相当短い期間での執行である。なぜ、130名の死刑確定者のうち今回の1名の死刑確定者について死刑執行されたのか説明はない。さらに今回死刑が執行された死刑確定者については、裁判において、犯行時に発達障害や知的障害により心神耗弱であったとの主張が弁護人からなされており、一審において精神鑑定も行われている。精神鑑定の結果、責任能力があるとされたものの、死刑執行にあたっては刑事訴訟法479条の執行停止の事由に該当しないかどうかについて、より一層慎重な判断が求められるはずであるが、法務大臣において、その点について、いかなる検討がなされたか、一切明らかにされていない。
我が国においては、4つの死刑確定事件(免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件)について再審無罪が確定したほか、布川事件、足利事件、東電OL殺人事件等の重大事件で再審無罪判決が確定している。加えて、本年3月27日には、死刑確定事件である袴田事件について、静岡地方裁判所が再審開始を決定し、死刑執行と拘置の停止を決定している。これらの事件が示すとおり、刑事裁判には、常にえん罪の可能性があり、ひとたび死刑が執行されてしまえば、取り返しはつかず、その不正義はまさに筆舌に尽くしがたい。
当会は、これまでも、死刑執行のたびに、死刑の執行を停止し、死刑廃止について全社会的議論を始めることを求める会長声明・会長談話を発表してきた。本年4月には、袴田事件再審開始決定と既に死刑が執行されている飯塚事件の再審請求事件の棄却決定を受けて「死刑執行を停止し死刑廃止について全社会的議論を開始することを求める会長声明」を発表した。
当会は、今回の死刑執行に抗議するとともに、改めて、死刑制度の廃止について全社会的議論を尽くすまでの間死刑の執行を停止するよう重ねて強く要請するものである。
2014年(平成26年)7月10日 横浜弁護士会 会長 小野 毅
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