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会長声明・決議・意見書(2014年度)

東日本入国管理センターにおける被収容者死亡事件に関し,早急かつ具体的に医療体制の充実を求めるとともに,収容についての入管行政見直しを求める会長声明

2014年05月14日更新

 東京入国管理局の収容施設である茨城県牛久市所在の東日本入国管理センターで,本年3月29日に30代のイラン国籍男性の被収容者が,3月30日には40代のカメルーン国籍男性の被収容者が連続して死亡するという事件が起こった。

 当局の発表によれば,イラン国籍の被収容者は,食事をのどに詰まらせて意識不明となり,病院に運んだが翌日に死亡し,カメルーン国籍の被収容者は数日前に体調不良を訴え,医師の診断を受けていたが意識不明の状態で見つかり,搬送先の病院で死亡したとのことである。

 現在常勤医がいない東日本入国管理センターでは,被収容者からの診察申出に対し,実際に診察や治療を受けるまでには長い時間を要すると聞いており,入国者収容所等視察委員会や,国連拷問禁止委員会,国連人権理事会がその医療体制の不備を指摘し,被収容者が適切な医療へのアクセスできないことに懸念を表明している。

 このような中にあって壮年の被収容者が連続して死亡する事件が発生したことは誠に遺憾である。被収容者に適切な医師の診断と措置を与え,被収容者の健康を保つことは同センターを含む入国者収容所長及び地方入国管理局長の法的な責務であり(被収容者処遇規則第30条第1項),同センターの医療体制を充実させることは急務である。

 本年5月1日に同センターを視察した谷垣法務大臣も,今回の死亡事件を受け,「研修医制度の見直しや公務員制度に柔軟性を持たせるなどして,施設内の医療体制を充実させたい」とコメントしている。  さらに当会は,収容所の医療体制の充実もさることながら,在留資格を有しない外国人を原則として施設内に収容するという入管行政の在り方自体に深い懸念を表明する。そもそも身体の自由を拘束する施設内収容はやむを得ない場合に例外的に適用すべきものであって,施設内収容を原則とすべきではない。また,やむなく収容した場合であっても,仮放免許可制度を柔軟に活用し,収容が長期化することを厳に避けなければならない。ましてや病気にり患している者に適切な医療を受ける機会も与えず,漫然と収容し続けることは人権の侵害に他ならない。

 同センターはもとより,入管当局においては,収容所に常勤医を設けるだけでなく,外部の医療機関へ受診する機会を確保するなど,早急にかつ具体的に収容所の医療体制の充実を図るように求める。また,収容を原則とする入管行政を見直し,少なくとも仮放免許可制度を柔軟に運用することで長期の収容を避けるよう,強く求めるものである。

2014(平成26)年5月13日
横浜弁護士会
会長   小野 毅

 
 
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