2014年04月25日更新
本年3月27日、静岡地裁は、いわゆる袴田事件について再審開始を決定したが、3月31日に検察官から即時抗告が申し立てられた。
袴田事件は、1980年に死刑が確定しており、その後袴田氏は常に死刑執行の恐怖にさらされてきたものである。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事司法の大原則に立ち帰れば、本件について、直ちに再審の審議を開始すべきであって、再審を開始するかどうかの判断にこれ以上の時間を費やすことは、78歳という袴田氏の年齢なども考えると著しく正義に反する。
また、本年3月31日、福岡地裁は、いわゆる飯塚事件について、遺族からの再審開始請求を棄却する決定を出した。飯塚事件は、2010年に再審無罪が確定した足利事件と同時期に同じ機関で実施された DNA型鑑定を最大の決め手とした死刑判決であるところ、同DNA型鑑定は足利事件でその信用性が完全に否定されていること等に鑑みれば、すみやかに再審開始を決定すべきであり、福岡地裁の判断は誠に遺憾である。
さらに、飯塚事件においては、DNA型鑑定を再鑑定するだけの試料が残されておらず、また、弁護団が証拠開示を求めた実験データなどの資料も検察側から見当たらないとされていることが再審開始の大きな障害となっている。
もしこれらの資料が残されていれば、再審開始に結びついた可能性があり、一貫して無実を訴えながら2008年にすでに死刑が執行されている久間氏やその遺族の無念は計り知れない。
これらの事件が示すとおり、刑事裁判には、常にえん罪の可能性があり、ひとたび死刑が執行されてしまえば、取り返しはつかず、その不正義はまさに筆舌に尽くしがたい。
当会は、これまでも、死刑執行のたびに、死刑の執行を停止して死刑廃止について全社会的議論を始めることを求める会長声明・会長談話を発表してきた。
当会は、今般あらためて、袴田事件再審開始決定及び飯塚事件の決定を受け、死刑について、多くの情報を開示し、全社会的な議論を開始することを求めるとともに、その議論が尽くされるまで死刑の執行を停止し、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求めるものである。
2014(平成26)年4月24日 横浜弁護士会 会長 小野 毅
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