2013年09月12日更新
当会は,すでに2010年(平成22年)3月17日両性の本質的平等と男女共同参画社会実現の観点から,「選択的夫婦別氏制度などを導入した民法改正の早期成立を求める会長声明」を発し,同声明内において,選択的夫婦別氏制度の他,婚外子の相続分差別規定等の早期の改正を求めていたところ, 最高裁大法廷は,今月4日婚外子の相続分を婚内子の2分の1とする民法900条4号ただし書前段の規定について,法律婚「制度の下で父母が婚姻関係になかったという,子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず,子を個人として尊重し,その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきている」との理由から,「立法府の裁量権を考慮しても,嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていた」と判示し,上記「規定は,遅くとも平成13年7月」(他の1件の決定では同年11月)「当時において,憲法14条1項に違反していた」とする2件の決定を行った。 最高裁は,これまで大法廷平成7年7月5日決定やその後の小法廷での判決や決定において,上記規定を憲法14条1項に反するとまではいえないとしていたが,これに対し,当会は,上記会長声明等において,当該規定は,本人の意思や努力によって変えることのできない事由により差別を行なうものであって,憲法13条,14条,憲法24条2項に違反し違憲は明らかであるとし,早急な改正を求めてきた。今回の最高裁決定は,当該規定について「個人の尊厳と法の下の平等を定める憲法に照らし」検討吟味したうえで,明確に違憲と断じた画期的な判断を下したものであり,当会はこれを高く評価するものである。 すでに法制審議会においては「民法の一部を改正する法律案要綱」を1996年(平成8年)総会で決定し,男女とも婚姻適齢を満18歳とすること,女性の再婚禁止期間の短縮,選択的夫婦別姓の導入,及び,婚外子と婚内子の相続分を同等とすることを答申していた。また,2010年(平成22年)にも上記要綱と同旨の法律案が政府により準備されていた。 それにもかかわらず,国会はいまだにこれらに関して法改正をせず,差別的な規定を放置している。このため国連の自由権規約委員会,女性差別撤廃委員会,児童の権利委員会及び社会権規約委員会は,民法の上記のような各差別的規定の改正について繰り返し勧告等を行ってきた。 今般上記のような違憲決定が出た以上,国会は,民法900条4号ただし書前段の規定を直ちに改め,婚外子と婚内子の相続分の平等を民法の条文上も明確にし,その際,「嫡出でない子(非嫡出子)」という表現自体も差別的であるので,あわせて用語を改正するべきである。のみならず,上記決定を契機に,国会は,家族法の規定全体について見直しを行い,婚姻適齢に男女の差を設ける民法731条,女性について不合理な再婚禁止期間を定める民法733条及び夫婦同氏を強制する民法750条といった各差別的規定についても,速やかに改正することを強く求めるものである。
2013年(平成25年)9月11日 横浜弁護士会 会長 仁平 信哉
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