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会長声明・決議・意見書(2013年度)

福井女子中学生殺人事件に関する会長声明

2013年04月02日更新

名古屋高等裁判所は、本年3月6日、いわゆる「福井女子中学生殺人事件」の再審請求事件の異議審において、検察官の異議を容れ、平成23年11月30日の名古屋高等裁判所金沢支部による再審開始決定を取り消し、前川彰司氏の再審請求を棄却した。

本件は、昭和61年3月、福井市内において女子中学生が殺害されたという事件である。前川氏は第一審で無罪とされながらも控訴審で逆転有罪となり、その後、最高裁へ上告したが棄却され、前川氏の有罪が確定した。

前川氏は、捜査段階から一貫して無実であると主張していた。本件においては、物証がほとんどなく、前川氏と犯行を結びつける証拠といえるものは、関係者の供述くらいであったが、その供述は変遷を繰り返しており、第一審裁判所はその信用性を認めず、前川氏を無罪とした。しかし、控訴審においては、一転してその供述の信用性が肯定され、前川氏が有罪とされたという経緯がある。

名古屋高裁金沢支部の再審請求審においては、弁護人の証拠開示請求に基づき、これまでの裁判では開示されていなかった解剖時の死体の写真や、関係者の供述証書等の重要証拠が検察官から開示された。その結果、同裁判所は、確定判決が認定した犯行態様に大きな疑問がある旨を指摘し、前川氏の有罪の根拠となった関係者の供述の信用性にも疑いがあるなどとして、再審開始決定をなしたのである。まさしく「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の大原則に従った正当な決定であった。

これに対し、今般の名古屋高裁の決定は、合理的な根拠なく関係者の供述の信用性を肯定するなど、その認定は極めて安易であり、無辜の者を救済するという再審制度の任務を放棄した不当なものと言わざるを得ない。

本件はまた、関係者の供述の信用性が重要な争点となったことから見ても、被疑者の取調べにつき、全過程の録画・録音をすべきことは当然として、関係者の取調べについても、その全過程を録画・録音すべき必要性があることを端的に物語っている。現在の法制審議会における議論では、取調べの可視化を限定的とすべき意見もあると聞くが、えん罪防止のためには、そのような議論は許されないことを改めて強調したい。

最後に、逮捕以来、約26年間にわたって闘い続けている前川氏の汚名を一刻も早く晴らすべく、当会は日弁連とともに、前川氏を支援するために可能な限りの取り組みをしていく所存である。

 

2013年(平成25年)3月27日
横浜弁護士会
会長 木村 保夫

 
 
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