2013年03月07日更新
本年2月21日、東京、大阪、名古屋の各拘置所において、3名の死刑確定者に対する死刑が執行された。民主党政権下の昨年9月27日以来の執行であり、本年度になって7名の死刑が執行されたことになる。 大阪拘置所において執行された死刑確定者は、一審の死刑判決後に弁護人が控訴したが、本人がこれを取り下げ、控訴審の判断を経ずに死刑が確定した後、再審請求をしたものの、これが棄却されたという経緯がある。 東京拘置所において執行された死刑確定者も、一審の死刑判決後に弁護人が控訴したが、本人がこれを取り下げ、控訴審の判断を経ずに死刑が確定した。報道によれば、自ら死を望み、死刑になるために殺人を犯したといわれている。 名古屋拘置所において執行された死刑確定者は、一審の無期懲役判決に対して検察官控訴がなされ、控訴審で死刑となり、上告したものの死刑が確定した。つまり、裁判所の判断が分かれた事案である。 就任後約2ヶ月の谷垣法務大臣は、どのような検討をして、これらの者に対する死刑執行命令を出したのか。疑問が残るといわざるを得ない。 当会は、死刑制度に関する国民的な議論を行い、あらゆる角度からの十分な検討がなされるまでの一定期間、死刑執行を停止すべきと繰り返し主張してきた。民主党政権下において、千葉景子元法務大臣は「死刑のあり方に関する勉強会」を立ち上げたが、同じく民主党の小川敏夫元法務大臣によって、この勉強会は終了とされ、昨年3月以来、合計10名の死刑執行が続いている。 自民党が政権に復帰した後も、死刑制度に関する議論が法務省内やその他においてなされている形跡は見られない。「議論を尽くすまで執行を停止する」どころか、「議論がなされないまま執行が繰り返される」という状況に、深い憂慮の念を抱かざるを得ない。 現在、死刑確定者は130名を超えるといわれている。死刑判決がなされ、上訴審が係属中のため、未確定の者も相当数にのぼる。わが国の刑罰のあり方はこれでよいのか、そのときどきの国内世論のみならず、国際社会からの意見も踏まえつつ、立ち止まって検討すべきではあるまいか。 当会は、繰り返される死刑執行に抗議するとともに、改めて政府に対し、死刑制度の存廃を含む十分な国民的議論を尽くすまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、重ねて強く要請するものである。
2013年(平成25年)3月6日 横浜弁護士会 会長 木村保夫
このページの先頭へ