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会長声明・決議・意見書(2012年度)

遠隔操作による脅迫メール事件に関する会長声明

2012年11月15日更新

ウェブサイトへの投稿やメールで犯罪の予告をしたとして、少年1名を含む男性4名が逮捕・起訴などされていた一連の事件について、真犯人を名乗る者からの犯行声明メールをきっかけに、捜査機関は上記4名が事件とは全くの無関係であり、誤認逮捕であったことを明確に認めた。

報道によると、このうち神奈川県警による誤認逮捕事件においては、逮捕された少年が犯行を否認していたにもかかわらず、逮捕から数日後になって、その少年が犯行を認める内容の上申書を作成していたとのことである。しかも、その上申書には、問題となったハンドルネームの由来や犯行動機などについて詳細な記載があったとされている。

無実の少年が、このような具体的かつ詳細な『虚偽』の上申書を自ら書くことなどできるはずもなく、上申書作成に際し、捜査機関による誘導があったことは明らかであり、捜査機関が少年に対して自白を強要したと断定せざるを得ない。

神奈川県警、横浜地検は、「IPアドレスが一致した以上は犯人である。」という強い思い込みを抱き、他の可能性を探求することなく、無辜の少年に対し、その身体拘束を利用して自白を迫り、少年を保護処分に追い込んだ。後に真実が判明し、家庭裁判所において保護処分が取り消されたといえども、この間、少年にもたらされた数々の不利益は容易に回復するはずもない。当会は、少年に対して重大な人権侵害を犯した捜査のあり方を強く非難するものである。

ところで、本件と同様に身体拘束を利用して無実の市民を虚偽自白に追い込んだ事例は数多く、捜査機関はその度に再発防止に努めるとしているが、一向に跡を絶たない。このことは、わが国の捜査機関に自浄能力がないことを示している。

かような虚偽自白防止のために、全事件において、取調べの全過程の録画・録音を直ちに実施すべきことは、いまさら指摘するまでもないが、それだけでは不十分であり、本件において、捜査のどこに問題があったのか、徹底的に検証されなければならない。

この点、横浜地検は内部的な検証をする旨表明しているが、検察庁内部での検証だけでは不十分であり、弁護士や有識者を含めた第三者による問題点の洗い出しを徹底的に行うべきである。そこまで徹底した検証をし、本件の捜査に対するあらゆる批判を踏まえた上で再発防止策を構築しないことには、同様の悲劇が繰り返されることになるであろう。

よって、当会は、神奈川県警、横浜地検に対して、本件捜査についての猛省を求めるとともに、本件捜査の問題点を徹底的に検証すべく、横浜地検に対し、当会会員である弁護士を含めた第三者による検証機関の設置を強く求める。

 

2012年(平成24年)11月14日
横浜弁護士会
会長 木村 保夫

 
 
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