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会長声明・決議・意見書(2012年度)

制限金利・上限金利引き上げに反対する会長声明

2012年08月08日更新

制限金利・上限金利引き上げに反対する会長声明


第1 声明の趣旨
   利息制限法の制限金利(年15ないし20パーセント)及び出資法の上限金利(年20パーセント)を、年30パーセント程度に緩和する内容の法改正の動きに対しては断固反対する。

 

第2 声明の理由
平成18年12月に「出資法上限金利の引き下げ」や「総量規制導入」などの画期的内容を含む貸金業法、出資法等の改正が行われ、平成22年6月18日に完全施行されてから2年が経過した。これらの改正法は、平成20年秋のリーマンショック以降の経済状況の悪化にもかかわらず、多重債務問題、中小企業の倒産問題を効果的に抑制しており、国民経済の安定、消費者や中小企業の保護の観点から高く評価されるべきものである。


これについて、現在、一部の国会議員が「正規の業者から借り入れない人がヤミ金から借り入れせざるを得ず、潜在的なヤミ金被害が広がっている。特に、零細な中小企業を相手とする短期融資に限り、利息制限法の制限金利(年15ないし20パーセント)及び出資法の上限金利(年20パーセント)を年30パーセント程度に緩和する必要性が高い。」等として、貸金業法及び出資法の例外措置の立法化を主張している。
 

しかし、ヤミ金被害の増加を示すデータはない。むしろ、ヤミ金被害を内容とする法律相談件数は減少している。警察庁の統計資料によってもヤミ金被害は年々減少傾向にある。これらは、平成15年のヤミ金対策法の施行、口座の凍結、犯罪利用携帯電話の利用停止措置の普及、取締りの厳格化の成果が出ていることを示している。潜在的なヤミ金被害が広がっているなどという立法事実はどこにも存在しない。
 

例外措置の立法化を求める者は短期融資の必要性を強調するが、利益率がこれら制限金利(利息制限法の年15ないし20パーセント)や上限金利(出資法の年20パーセント)を超える中小企業はほとんど存在しない。このような状況で、短期融資であっても制限金利・上限金利の例外を認めると、経済的に窮した中小企業は資金繰りを同短期融資に依存することにより、結局、利益を超えた返済を更に強いられる結果を招き、逆に中小企業の倒産を促進させかねないばかりか、利益を超えた返済を強いられた経済的弱者が家族・親族・友人までをも連帯保証人として多重債務の連鎖を作り出した暗い過去を再来させかねない。経済的な弱者の立場に置かれた人々を暴利から保護する強行法規である利息制限法と出資法の原則にいま一度立ち返るべきである。
 

当会においては、既に平成17年2月23日「みなし弁済規定の撤廃及び制限利率の引き下げを求める会長声明」、平成18年6月19日「出資法の上限金利の引き下げを求める会長声明」において、現行の利息制限法の制限金利それ自体が一般的な中小企業等の実情に照らし高すぎる旨を主張し続けてきた。今般の貸金業法等の例外措置の立法化の動きは、これに逆行するものである。
 

制限金利・上限金利の更なる引き下げの方向での改正であれば格別、制限金利・上限金利の例外を認めるなど、およそ考えられない。
 

中小企業の保護は、制限金利・上限金利の緩和によってなされるべきではなく、中小企業が有する短期の資金需要も含めた中小企業に対するセーフティネットの充実、中小企業金融円滑化法の延長等、中小企業の支援のための抜本的な経済政策によって国が解決すべき問題である。これをノンバンク市場に求めることは、現状においても低迷している中小企業の利益の大部分が金利の支払いに消えていく結果を招来することになり、更なる経済の停滞を招くことになりかねない。
 

以 上


                                         2012年(平成24年)8月 8日
                                               横浜弁護士会 
会長  木村 保夫

 
 
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