2012年05月17日更新
多数の消費者を巻き込んだ消費者被害事件の発生は跡を絶たず、全国の消費生活相談の件数は、2010年度で約89万件と、依然として高い水準が続いている。しかし、現在の訴訟制度を一般の人が利用するためには相応の費用・労力を要する現状にあるため、事業者に比べて情報力・交渉力で劣る消費者は、被害回復のための行動を起こすことが困難である。また、これまでの消費者団体訴訟制度では、適格消費者団体が損害金等の請求をすることが権利として認められていないため、消費者の被害救済には必ずしも結びつかないという問題がある。 そこで、2009年のいわゆる消費者庁国会の際、この制度の必要性が審議され、消費者庁関連3法の施行後3年(2012年)を目途として、新たな制度について検討を加え必要な措置を講ずることが附則として盛り込まれた(消費者庁及び消費者委員会設置附則6項)。 このような経緯で、内閣府消費者委員会の集団的消費者被害救済制度専門調査会において新たな訴訟制度が審議され、2011年8月には報告書が取りまとめられた。これを受けて、消費者庁は同年12月に「集団的消費者被害回復に係る訴訟制度の骨子」を公表し、その法案を準備している。 この骨子に基づく制度案は、共通争点を有し多数発生している消費者被害を対象事案とし、手続追行主体を内閣総理大臣が認定する適格消費者団体に限定している。また、訴訟手続を二段階に区分し、一段目の訴訟で事業者側の法的責任が認められた場合に、二段目で個々の被害者が参加して、簡易な手続きで被害額を確定して被害回復を図るという仕組みとしている。 本制度案は、消費者にとって費用・労力の面で現行制度より負担が軽減されるとともに、対象事案も事業者が紛争全体を見通すことのできる契約関係を中心に選定するなど、事業者側にも配慮のあるものとなっている。 よって、当会は、政府及び国会に対し、上記制度案を骨子とする集団的消費者被害回復に係る訴訟制度について、2012年通常国会に法案を提出し、早期にその創設を図るよう強く要請する。
2012年5月 9日 横浜弁護士会 会長 木 村 保 夫
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