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会長声明・決議・意見書(2011年度)

法曹養成制度の見直しを検討する間は給費制を維持することを求める会長声明

2012年03月22日更新

当会は、2010年6月11日及び2011年2月14日、同年8月11日に会長声明を発表し、我が国における司法修習の意義及び司法修習生に給与を支給する給費制の意義からその維持を求めてきた。

しかし、昨年10月31日をもって給費制の延長期間が終了し、同年11月から司法修習が始まった新65期司法修習生に対しては、修習期間中の生活資金を貸与する貸与制が実施された。これにより本給だけでなく、それまで支給されていた交通費や住居手当も支給されなくなった。修習専念義務を負う司法修習生には収入を得る道はない。

新65期司法修習生に対し、当会が行ったアンケートでは、貸与を受けている者は86%、貸与額の平均は月額23万6579円であるのに対し、住居費と交通費の月額平均は11万2241円である。さらに社会保険料を負担することを勘案すると、実質的な生活費は10万円を下回ると思われる。

また実務修習地を自宅から通えない地域に指定された司法修習生は、1年の修習期間中に少なくとも2回引越しをしなければならないが、その引っ越し費用も自己負担であり、さらに、就職希望地での就職活動のための交通費も自己負担である。実務修習地が司法修習生の希望どおりになるとは限らないことからすると、その負担は大きい。

司法研修所入所時に司法修習生の57%が平均450万円の奨学金を抱えているという現状があるが、貸与制の実施によって修習終了時にはさらに総額約300万円の借入が上乗せされることになる。
当会のアンケート結果によっても将来の就職、生活に対する不安を持つ司法修習生は86%に上っているが、それも当然のことと言わなければならない。

現在の法曹養成制度については、法科大学院における教育内容のばらつき、司法試験の合格率の低迷、法科大学院の学費負担及び司法修習終了後の就職難等と、その結果としての法曹志望者の激減等、様々な問題点が指摘されてきたところである。それらを受け、2010年11月26日の裁判所法改正の際の附帯決議に基づき政府に設置された法曹養成に関するフォーラムにおいて法曹養成制度について検討がされているが、今回の貸与制への移行は、これら法曹養成制度全体に関する検討も経ずに拙速に強行されたものであると言わざるを得ない。加えて、当会のアンケート結果からも分かるように、法曹養成制度全体の見直しを伴わない中での貸与制への移行によって、かねて懸念されていた問題点が現実のものとなっている。まずはこの現実を直視し、改善することが急務である。

昨年の臨時国会において、政府から、貸与制の下で貸与金の返還猶予の条件に経済的事情を追加する「裁判所法の一部を改正する法律案」が提出され、他方、公明党から、この法案に対し、「法曹養成制度全体の早期見直し」と「その間の給費制存続」を盛り込む修正案が提出され、継続審議となって、現在通常国会において審議されているところであるが、少なくとも、法曹養成制度全体に関する検討結果が出されるまでは、従前の給費制を維持すべきである。

当会は、あらためて、法曹養成制度全体の検討がなされている間は司法修習生に対する給費制を存続するよう強く求める。


2012(平成24)年3月22日
横浜弁護士会会長 小島周一

 
 
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