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会長声明・決議・意見書(2011年度)

原子力損害賠償紛争解決センター和解仲介手続を全国各地で開催するよう求める会長声明

2012年03月08日更新

2011年3月11日の東日本大震災を端緒として発生した東京電力福島第1原子力発電所事故は未曽有の被害を引き起こした。この原発事故による被害者の東京電力株式会社に対する原子力損害賠償請求の迅速かつ適正な解決のため、和解仲介手続機関として、同年8月29日、原子力損害賠償紛争解決センター(以下「センター」という。)が設置された。

しかし、これまで、センターに申し立てられた件数は1100件余り、うち和解が成立したのは13件とされており、数十万人といわれる原発事故の被害者の数からすれば極僅かな数であり、有効に機能しているとはいえない。

そもそも、センターの和解仲介手続は裁判手続きよりも迅速に被害の救済を図るために設置されたものであり、センターの和解仲介手続の充実が強く求められるところである。

このような状況において、本年2月27日、和解仲介手続申立第1号事件で、東京電力がセンターの和解仲介案を全面的に受け入れ和解が成立した。この和解の内容は、①原発事故による財産価値の減少等に対する賠償を認めたこと、②中間指針で目安として示された金額を超える慰謝料の増額を認めたこと、③仮払い補償金を本和解時に精算しないとしたこと、④清算条項を明記せず将来の追加請求の可能性を認めたことなどである。この和解内容、特に、仮払い補償金の精算をしなかったこと、清算条項を明記しなかったことは、原発事故から1年を経過し、経済的・精神的に追い詰められ苛酷な状況に陥っている原発事故被害者にとって、損害賠償請求をし易くするものであり、今後、センターへの申立てが急増することが予想される。

ところで、センターでは申立後、仲介委員が指名され、同委員が必要と認めるときは、原則として、センターの東京事務所(東京都港区新橋)または福島事務所(福島県郡山市)において口頭審理手続期日が開催されることとなる(原紛センター業務規程24条1項)。

しかしながら、全国各地に避難している原発事故被害者が、口頭審理手続期日に出頭しようとする場合、避難場所が東京事務所または福島事務所から遠ければ遠いほど、移動時間、交通費がかかってしまうため、多くの被害者が原紛センターにおける申し立てを断念してしまう恐れもある。

そこで、全国に避難している原発事故被害者が積極的にセンターへの申立ができるようにするため、全国各地において口頭審理手続が開催できるようにするべきである。そのため全国の各弁護士会は、センターに対して、積極的に紛争解決センター等の場所を提供し、センターにおいてはセンター業務規程24条2項但書きの積極的な活用をして、同場所を口頭審理手続の開催場所とすべきである。当会は、当会の紛争解決センターの場所をセンターの口頭審理手続に積極的に提供し、原発被害者の迅速な救済に全面的に協力するものである。

 

以上

2012(平成24)年3月7日
横浜弁護士会会長 小島周一

 
 
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