2011年06月08日更新
2011(平成23)年5月13日、消費者庁と国民生活センターによる「国民生活センターの在り方の見直しに係るタスクフォース」は,中間整理を公表した。 この中間整理が示す国民生活センターの「今後の方向性」は,独立行政法人国民生活センターの業務見直しと消費者庁の機能強化の名の下に,国民生活センターの諸機能を消費者庁に統合し,その一部の機能を「施設等機関」(内閣府設置法55条)として位置付ける,というものである。 上記、中間整理は,国民生活センターの情報分析提供部門については消費者庁の内部部局化し,紛争解決手続(ADR)も紛争解決の指針として提示する機能に限定し、かつ「施設等機関」から分離する構想である。 これについては次の問題がある。 まず、①情報分析・注意喚起業務を消費者庁の内部部局に統合すると,国民生活センターによる情報提供機能が,消費者庁内の法執行部門や司令塔部門との調整などでタイムリーな提供ができず,遅れることが避けられず,総体として国民・消費者の利益とならない。 さらに,②相談,研修を行う「施設等機関」自体が,消費者庁の関連部門との間で業務の独立性や専門職員養成の人事面の独立性を確保できるのかこの中間整理では明確となっていない。 その上、③消費者委員会と消費者庁・国民生活センターとの関係について、中間整理ではなんら触れられていない。 国民生活センターは、これまで様々な消費者問題に取り組むまさにセンターとしての機能を果たしてきたのであって、新たなあり方を考える際には、これまで国民生活センターが消費者保護に果たしてきた機能を減殺する方向であってはならなず、より消費者保護実現に向けた改革でなければならないことは言うまでもない。 そして、消費者保護を実現する制度趣旨を鑑みれば、国民生活センターの各機能を一体的に,かつ消費者庁から一定の独立性を確保したうえで,消費庁との連携を推進する組織とすることが不可欠である。従って,中間整理の提案する「施設等機関」ではその一体性や独立性が確保できない問題点がある以上,同中間整理は取りえないと考える。 よって,当会は,消費者目線に立ったより機動性,柔軟性,専門性を確保できるためにも、政府から独立した新しい法人として、一体性や独立性を確保した新組織の在り方を検討するよう要請するものである。
以上
2011(平成23)年6月8日 横浜弁護士会 会長 小島 周一
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