2011年06月08日更新
現在、国による地方消費者行政の充実策が検討されている。これは平成21年に消費者庁を設置し、平成23年度までの地方消費者行政活性化交付金の創設を決定するに際して、消費者庁及び消費者委員会設置法附則4項により、平成24年9月までに消費生活センターの法制上の位置づけ並びに適正な配置及び人員の確保、消費生活相談員の待遇の改善その他の地方公共団体の消費者政策の実施に対し国が行う支援の在り方について所要の法改正を含む全般的な検討を加え、必要な措置を講じるものとするとされたことによるものである。 ところが、地域主権改革の議論が進む中で、地方消費者行政に対する国の役割・責任が不明確となることが懸念されている。 従前、消費者行政を推進する中央官庁が存在しなかったこともあり、消費者行政に対する地方自治体の意識や体制は各自治体により格差があった。神奈川県では消費者行政において、県民1人当たりの消費者行政予算が全国と比較しても非常に低廉であったこともそのひとつである。その神奈川県内においても、さらに県下33市町村における消費者行政に対する意識や体制の格差は大きく、これらの格差は、未だ十分に是正されていないのが実情である。また、消費生活相談窓口を現場で担っている消費生活相談員の地位・待遇も、期限付きの非常勤職員の扱いが大半であり、その待遇も、消費生活相談業務の専門性に見合ったものとは言い難い現状にある。 住民の健全な消費生活を実現するためにも、このような消費者行政の格差が地域によって生じることはあってはならない。また、住民が安心して相談できる消費生活相談窓口を実現するためには、消費生活相談員の専門性の向上とともに、その地位の安定、待遇の改善に向けた制度の整備も重要である。 加えて、地方自治体が担っている消費者行政の業務の中には、相談情報を国に集約するパイオ・ネットシステムへの入力作業や、違法業者に対する行政処分等、国全体の利益のために行っているものも少なくない。 以上のような消費者行政上の格差を是正し、国全体の消費者行政を支える観点から、現在、国からの支援として、地方消費者行政活性化交付金、住民生活に光を注ぐ交付金が存在するが、いずれも期間限定の支援に留まっており、相談員や正規職員の増員による人的体制強化等継続的な経費への活用には自ずと限界がある。 もとより地方自治体が独自の工夫・努力によって消費者行政を充実させることは当然であるが、そもそも地方公共団体が消費者行政を担うためには財政的な裏付けが何より必要である。法は平成24年9月までに消費者行政の充実のために必要な措置を講じるとしているが、財政的な裏付けが一時的なものにとどまる限り実効的な地方消費者行政は限界がある。従って、国は平成24年9月以降も、地方消費者行政充実のために継続的かつ実効的な財政支援をより厚く行うよう必要な措置を講じるべきである。 よって,当会は、国会及び政府に対し、地方消費者行政の充実に向けた財政的支援を、平成24 年10 月以降も継続、充実させるよう強く要請する。
2011(平成23)年6月8日 横浜弁護士会 会長 小島 周一
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