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相続放棄等の熟慮期間を伸長する特別法の制定を求める会長声明
会長声明・決議・意見書(2011年度)
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相続放棄等の熟慮期間を伸長する特別法の制定を求める会長声明
2011年06月08日更新
2011(平成23)年6月8日
横浜弁護士会
会長 小島 周一
本年3月11日に発生した東日本大震災から間もなく3か月が経とうとしている。この間、被災者の救援、復興・復旧支援について政府によって十分な政策が採られてきたとは言い難い。
ところで、民法915条第1項では相続放棄等の熟慮期間が3か月と定められているため,家庭裁判所に熟慮期間伸長の申立てをしない限り、大震災による犠牲者の相続人の多くについて,6月中旬に相続の単純承認したものとみなされることになってしまう(民法921条第2号)。
しかし,現在においても9万9000人に上る被災者が避難所に身を寄せているように、上記犠牲者の相続人は,その多くが自らも被災されていると思われ、また原発の被害は進行中で,被災者は生活再建の見通しを立てられない状態にある。このような現状からすると,相続人にとって,3か月の熟慮期間があまりに短いことは明らかである。
被災地弁護士会をはじめ全国の弁護士会において熟慮期間伸長の申立てをするように被災者を支援するとともに、積極的な相談・広報活動を行っている。
しかし、被災者の現状に鑑みれば、戸籍等をそろえて熟慮期間伸長の申立てをすることは極めて困難である。
また裁判実務において熟慮期間の始期を弾力的に解するなど、個別に救済する形で対応することが期待されているが、弾力的解釈にも限界がある。
そもそも相続放棄等の熟慮期間を限定する趣旨は、相続関係を早期に確定させ法律関係の安定を図ることにある。しかし、被災地では復興方針も決まっておらず、経済活動もいまだに非常事態が続き、被災土地の買取りや既存の債務の免除などの立法措置も検討されるなど,前提となる社会経済状況そのものが流動的で、法律関係の安定を早期に図る必要性そのものが乏しい。津波被害地域や原発避難地域では有価証券や動産等が散逸したり、債務等についても関係者と連絡さえ取れない場合も多く、こうした状況下で早期に相続関係を確定させることは,かえって法律関係の混乱を招くことにもなりかねない。
そこで熟慮期間を伸長する特別法を制定することにより、相続問題を抱える被災者の不安を解消し、法律関係の混乱を回避することが必要である。
被災者の生活状況の一応の安定が確保されるには少なくとも半年以上を要すると見込まれること,土地買取りや債務免除等の立法措置が現実に講じられるには少なくとも今後数か月以上を要すること,被災者にとって期間の終期が分かりやすいこと等を考慮し,熟慮期間を1年に伸長することが相当である。
以上のとおりであるから,東日本大震災によって相続が開始された件については,民法第915条の熟慮期間を3ヶ月から1年に伸長する特別法の制定を早急に行うよう強く求めるものである。
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