2011年05月25日更新
本年3月11日,マグニチュード9.0という国内観測史上最大の大地震を発端とした東日本大震災が発生した。この大震災による死者,行方不明者は2万5000人を超え,生活基盤を根こそぎ破壊された人々のうち今なお12万人もの方々が困難な避難所生活を強いられているという未曽有の大災害である。さらに,この地震と津波による東京電力福島第1原子力発電所原子炉の事故が発生し,放射性物質の放出により,周辺住民だけでなく,我が国全体に多大の不安と脅威を与えている。 神奈川県においては,この震災によって4名の方がお亡くなりになり,大きな被害を受けたビル・家屋等も少なくなく,液状化等の被害も発生している。さらに,原子力発電所事故による放射能汚染は,現実に農作物に大きな被害を発生させ,風評被害も含めてその影響は県下に及んでいる。また,大震災後,主として福島県からの避難者を中心に,とどろきアリーナ,かながわ女性センターなど県内各地の避難所で,現在でも100名を超える方々が不便な生活を強いられ,これらの方々と,公営住宅などの二次受け入れ施設に移って生活をしている方々,社会福祉施設等で生活している方々,民間有志による受け入れ先で生活している方々,家族・親戚・知人等を頼って避難してきた方々などを合わせれば,1000名を超える被災者が県内で避難生活を余儀なくされていると推定される。 横浜弁護士会は,まず,この大災害により無念にも命を落とされた方々に対し,謹んで哀悼の意を表し,ご冥福をお祈りするとともに,被災された方々に心からのお見舞いを申し上げる。 このような事態において,基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする我々弁護士は,その持つ知識,経験等,能力のすべてを用い,被災者の救済及び復興の支援に全力で取り組まなければならない。 当会は,3月24日に東日本大震災災害対策チームを立ち上げ,被災者支援ボランティア弁護士を募集して,県下の自治体の協力もいただきながら県内各避難所に会員弁護士が赴いて無料法律相談活動を行うとともに,4月7日からは無料電話相談「被災者ホットダイヤル」を平日に毎日実施してきた。さらに5月以降,日本弁護士連合会,関東弁護士会連合会等と連携して,福島県など被災地の避難所等に出向いての無料法律相談にも取り組んできた。そのほか,大震災発生直後から義援金の募集を行い,これを被災者の方々への支援,救援活動資金に充てるなどの活動を行ってきた。本日現在,会員弁護士1200名余のうち約200名が被災者支援のボランティア弁護士名簿に登録し,県外への無料法律相談への協力にも約120名の弁護士が名乗りを上げている。 今回の震災被害は,地震・津波の自然災害に加え,原子力発電所の事故による放射能汚染という史上例のない複合被害であり,復旧・復興,被害回復までには相当の長期間を要することが予想される。地震,津波による被害で避難生活を強いられている方々の復旧・復興の見通しは未だ立っておらず,原子力発電所の事故によって避難を強いられた周辺地域住民も,いつ帰還できるかも分からない状態が続いている。原子力発電所からの放射性物質の拡散によって,神奈川県も含めた広い範囲にわたって,農作物等の出荷制限,風評被害による損害の拡大,放射線の人体影響への不安などの被害が生じており,未だ事態収束の目処さえ立たないという極めて深刻な状況が続いている。 この事態の中で,すでに生じている膨大かつ様々な法律問題に加え,新たな法律問題が生じることも必至であり,我々弁護士が果たすべき役割が今後一層大きくなることは明らかである。 これらを踏まえ,当会は,東日本大震災及び原子力発電所事故による被災者の救済と被災地の復旧・復興支援に向けて以下の取り組みを行う。
横浜弁護士会は,一刻も早い被災者の方々の生活再建と被災地の復旧,復興を心から願い,会員一丸となって,これらの活動に全力で取り組む決意であることをここに表明する。
2011年(平成23年)5月25日 平成23年度横浜弁護士会通常総会
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