2009年12月09日更新
当会は政府に対し、国選付添人制度の対象事件を、少なくとも少年鑑別所に送致された少年の事件全件にまで拡大するよう、速やかに少年法を改正することを求める。
記
少年審判手続において、弁護士は、「付添人」という立場から、少年に対して必要な法的援助を行い、裁判所の事実認定や処分決定が適正に行われるよう活動している。しかし、実際に弁護士付添人が選任される例は少なく、弁護士付添人の選任率は、少年鑑別所に収容され審判を受ける少年の約40%、審判を受ける少年全体では約8.5%に過ぎない。成人の刑事裁判では、約98.7%の被告人に弁護人が選任されていることと比べると、未成熟な少年に対する法的援助は極めて不十分な状況にある。 このような状況が生じている大きな原因に、少年審判における国選付添人制度の範囲が限定されていることがある。現在の制度は、主に殺人や強盗などの重大事件を対象とし、国選付添人を選任するか否かは裁判所の裁量に委ねられている。そのため、多くの事件で少年に国選付添人が選任されない事態が生じている。 さらに、本年5月21日からは、被疑者段階の国選弁護制度の対象が窃盗や傷害などの事件にまで拡大されたが、これにより、少年の場合には、「捜査の段階では国選弁護人が選任されたにもかかわらず、家庭裁判所の審判になると国選付添人が選任されない」という事態が生じうる状況となっており、制度上の矛盾は一層明らかである。 日弁連は、少年に対する法的援助を保障する観点から、時限的な措置として、全会員の特別会費に基づく特別基金を会内に設置し、国選付添人制度の対象とならない事件の少年・保護者に対しても弁護士費用を援助する制度(「少年保護事件付添援助制度」)を設けている。当会でも、この制度を積極的に利用するため、2000(平成12)年10月には、少年鑑別所へ収容された少年に対する当番弁護士制度を横浜家庭裁判所本庁で開始し、2006(平成18)年8月には、この制度を全県下に拡大した。また、横浜家庭裁判所との協議により、家庭裁判所が弁護士付添人の選任を必要と考える少年に対し、付添援助制度を利用して弁護士付添人の選任を求めることができる制度(付添援助申出制度)を整備し、現行制度上国選付添人を選任できない場合などに、積極的に運用してきた。このように、被疑者国選弁護制度の拡大後も、国選弁護人が引き続き付添援助制度を利用して付添人活動を行えるよう、当会では様々な取組みを行っている。 しかしながら、心身ともに未成熟であり、容易に取調官の誘導に応じやすい少年に対して、捜査から審判に至る一連の手続で適正な手続を保障し、更生の支援をするという法的援助を与えることは、本来、国の責務である。国による少年への法的援助の保障が、成人に対するよりも不十分である現状は、一刻も早く改善されなければならない。とりわけ、少年鑑別所で身体を拘束された少年については、事件の軽重を問わず、少年院送致などの重大な処分を受ける可能性が高いことから、国選付添人による法的援助を早急に整えなくてはならない。 よって、上記のとおり、速やかな法改正を求めるものである。
2009(平成21)年12月9日 横浜弁護士会 会 長 岡部 光平
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