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会長声明・決議・意見書(2008年度)

遅延損害金名目の高金利の取得を許さない会長声明

2009年03月26日更新

平成21年3月26日
横浜弁護士会
会長 武井 共夫
 

  1. 現行の利息制限法は、1条で、元本が10万円未満の場合20%、10万円以上100万円未満の場合18%、100万円以上の場合15%の上限利息を定める一方で、4条で元本に対する割合として1条に規定する率の1.46倍までの賠償額の予定(遅延損害金)の効力を認めている。また、改正利息制限法によれば同法7条に営業的金銭消費貸借の特例はあるものの、同規定によっても年20%の遅延損害金の受領が認められている。
  2. 当会はかねてから、利息制限法の上限利息を超えて当時の貸金業規制法の上限金利を下回る高金利の問題点を指摘し、利息制限法の上限利息自体も消費者契約法9条に定められる遅延損害金14.6%に比して高い水準であることを指摘してきたところである(平成18年6月8日付「出資法の上限金利の引き下げを求める会長声明」)。そして、このような問題意識が各界から出され、グレーゾーンが撤廃されるという立法に至ったことを高く評価するものでもある。
  3. しかしながら、昨今、わずかな期間の遅れや軽微な事由をもって期限の利益を喪失したものとして、以降の取引につき、約定利息ではなく賠償額の予定規定の適用を主張し、遅延損害金を請求する貸金業者が現れてきており、これについて多数の紛争が生じている。もし、このような手法が一般化すれば、例えば100万円以上の貸付において、わずかの期間の遅れや軽微な事由をもって期限の利益を喪失したものとして、改正利息制限法適用下の営業的金銭消費貸借においても20%の遅延損害金を受領することが常態化することとなり、新たな「グレーゾーン金利」とでも言うべき問題が生じかねない。

    そもそも、営業的金銭消費貸借契約においては、制限された範囲内での利息以上に、高利の遅延損害金(これも「利息」と言わざるを得ない)を取得すべき経済的合理性は希薄であるといって良い。
  4. グレーゾーン、みなし弁済の規定がさまざまな高金利被害を起こす元凶であったのは周知の事実であり、改正に至るまで多数の被害が続出したことは記憶に新しい。横浜弁護士会としては、再び、このような悪夢を招来させてはならないと考え、裁判所、国会、その他関係諸機関に対し以下のことを要望し、同時に、広く国民に訴えて世論喚起を促すものである。


? 営業的金銭消費貸借契約においては、各分割払いの期日に遅れがでたとしても、その分の利息が支払われれば、経済的な損失もないのであるから、遅延損害金請求の局面においては、信義則上、安易な期限の利益喪失を認めず、期限の利益喪失の主張を制限する解釈や法整備が必要であること。

? 営業的金銭消費貸借契約においては、名目は遅延損害金ではあっても約定利息以上に高利の「利息」を取得させるべき経済的な合理的根拠は希薄であるから、遅延損害金の元本に対する割合を引き下げ、遅延損害金を含めた上限利息の一体的な法整備が必要であること。

 以 上

 
 
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