2008年11月14日更新
10月28日、仙台拘置支所及び福岡拘置所において1名ずつ、計2名の死刑確定者に対して死刑が執行された。 これは、本年に入ってから5回目の死刑執行であり、執行された死刑確定者の数は、本年だけで15名にのぼる。これは、過去30年間で最多の数である。当会は、かような事態に対し、深い憂慮の念を示すとともに、強く抗議する。 国際社会においては、死刑廃止が潮流となっている。 1989年の国連総会で死刑廃止条約が採択され(1991年発効)、1997年4月以降毎年、国連人権委員会(2006年国連人権理事会に改組)は 「死刑廃止に関する決議」を行っている。さらに、2007年12月には、国連総会本会議において、死刑執行の停止を求める決議が圧倒的多数で採択された。 これに対して、わが国では、死刑判決数および死刑執行数がともに、近年顕著な増加をみせており、こうしたわが国の状況に対しては、国連拷問防止委員会(2007年5月)、さらに国連人権理事会(2008年6月)から深刻な懸念が示され、死刑に直面する者に対する権利保障を整備するとともに、死刑の執行を停止することが勧告されてきた。10月30日には、国際人権(自由権)規約委員会が、わが国について、「ここ数年、死刑執行の件数が着実に増えている」との懸念を示した上で、「国民世論と関係なく、日本は死刑廃止を前向きに検討すべきだ」と勧告する最終所見を採択した。 今回の死刑執行は、最終所見がまさに採択されようとしている直前に敢行されたものであり、政府が、国際社会からの要請に一切耳を傾けず、わが国が加入した人権条約を尊重する意思がないことを宣明する行為に等しい。このままではわが国は国際社会から人権国家としての評価を失うことになりかねない。 当会は、改めて政府に対し、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、重ねて強く要請するものである。
2008年(平成20年)11月13日 横浜弁護士会 会長 武井 共夫
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