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会長声明・決議・意見書(2008年度)

当会所属弁護士を原告とする国家賠償請求事件に関する会長談話

2008年11月07日更新

横浜地方裁判所は10月24日、当会所属の妹尾孝之弁護士を原告とする国家賠償請求事件において、国に対し、慰謝料10万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

本件は、妹尾弁護士がある被疑者の弁護人として弁護活動をしていたところ、同被疑者の取調に当たっていた横浜地方検察庁の検察官が、同被疑者に対して「弁護過誤だな」、「被疑者のマイナスになるような弁護活動をやるような弁護士がいて困ったもんだ」、「弁護士に洗脳されてるんじゃないの」、「盲目的に弁護士を信じても最後は弁護士は責任とってくれないよ」などと申し向けたものであり、これによって弁護権を侵害されたとして、妹尾弁護士が国に対し、損害賠償を求めていた事案である。

判決で横浜地裁は、検察官において、被疑者の取調中に不当な発言をあったことを認定した上で、「取調を担当する検察官という立場にある者が、上記のような弁護方針への批判を、取調中の密室で被疑者に告知するのは、弁護人と被疑者との信頼関係を破壊する言動と評価せざるを得ない。仮に、取調官によるこのような言動が放置されるならば、弁護人は、被疑者との信頼関係を維持することができなくなり、ひいて、被疑者との接見交通が、その実質を保ち得ない結果となることは明らかである。」などと述べた。

本件において、妹尾弁護士は弁護人として忠実にその職務を果たしていたのであり、自らに都合のよい供述調書を作成したいがために、取調室という密室の中で弁護人批判という挙に出た検察官の行為は極めて不当なものといわざるを得ない。検察官の行為を厳しく批判し、これを違法とした今回の判決は、弁護権の重要性を正当に評価した画期的なものである。

今回の事件は、今なお取調が密室で行われているということと無縁ではない。当会は、本年5月20日、取調の全過程の録画・録音による可視化を求める総会決議を行ったが、今回の事件を通じ、改めてその必要性を痛感する。

当会は、今後とも、検察官等による不当な弁護活動への介入を許さず、当会会員が被疑者、被告人のために充実した弁護活動を行っていくこと、さらには、全会員一丸となって、取調の全面可視化の実現のために全力を傾けていく決意である。


2008(平成20)年11月4日
横浜弁護士会
会長  武井 共夫

 
 
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