2007年12月18日更新
12月7日,東京拘置所において2名,大阪拘置所において1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。昨年12月25日に4名,本年4月27日に3名,本年8月23日に3名の死刑確定者に対して死刑が執行されており,今回の死刑執行と合わせて過去1年の間に13名に対し死刑が執行されたものである。 当会は,死刑制度の存廃について国民的な議論が尽くされるまで死刑の執行を停止するよう,これまで再三にわたって政府に対し要請してきたが,今回またしても死刑の執行がなされたことは誠に遺憾である。 死刑については,死刑廃止条約が1989年12月15日の国連総会で採択され(1991年発効),1997年4月以降毎年,国連人権委員会(2006年国連人権理事会に改組)は「死刑廃止に関する決議」を行い,その決議の中で日本などの死刑存置国に対して「死刑に直面する者に対する権利保障を遵守するとともに,死刑の完全な廃止を視野に入れ,死刑執行の停止を考慮するよう求める」旨の呼びかけを行っている。このような状況の下で,死刑廃止国は着実に増加し,1990年当時の死刑存置国96か国,死刑廃止国80か国(法律で廃止している国と過去10年以上執行していない事実上の廃止国を含む。)に対し,2007年10月2日現在,死刑存置国64か国,死刑廃止国133か国と,死刑廃止が国際的な潮流となっていることは明らかである。 また,同年5月18日に示された国連の拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解・勧告においては,我が国の死刑制度の問題が端的に示された上で,死刑の執行を速やかに停止するべきことなどが勧告されており,さらに同年11月15日には,国連総会第三委員会において,全ての死刑存置国に対して死刑執行の停止を求める決議案が採択され,近日中に本会議でも採択されようとしている状況の下で,今回の死刑の執行はなされたものである。 我が国では,4つの死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)について再審無罪判決が確定し,死刑判決にも誤判が存在したことが明らかとなっている。しかし,このような誤判を生じるに至った制度上,運用上の問題点については,何ら抜本的な改善が図られておらず,誤まった死刑の危険性は依然存在する。しかも,死刑と無期の量刑について,裁判所によって判断の分かれる事例が相次いでおり,死刑についての明確な判断基準が存在しないことも明らかとなっている。 このような状況を踏まえ,日本弁護士連合会は,2002年11月,「死刑制度問題に関する提言」を発表し,死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし,また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間,死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱した。 特に2009年からの裁判員裁判の実施を控え,今,死刑制度の存廃について国民的議論を尽くすことは極めて重要であると考える。 今回,法務省は,死刑執行の事実のみならず,死刑囚の氏名や犯罪事実の概要などを初めて公表したが,その是非については議論の存するところである。一方で,死刑執行の方法や場所,死刑囚の心理状態など,死刑制度に関する重要な情報の公開は未だ不十分である。 そこで当会は,改めて政府に対し,死刑制度に関する情報を広く公開することを要請するとともに,死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間,死刑の執行を停止するよう,強く要請するものである。
2007(平成19)年12月13日 横浜弁護士会 会長 山本 一行
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