2007年09月20日更新
8月23日,東京拘置所において2名,名古屋拘置所において1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。長勢甚遠前法務大臣就任後,昨年12月25日には4名,本年4月27日には3名の死刑確定者に対して死刑が執行されており,今回の死刑執行と合わせて約8か月の間に合計10名に対し死刑が執行されたものである。 当会は,これまで,死刑の執行がなされるたびに,法務大臣に対し,死刑の執行を停止するよう要請してきており,今回またしても死刑の執行がなされたことは誠に遺憾である。 死刑については,死刑廃止条約が1989年12月15日の国連総会で採択され(1991年発効),1997年4月以降毎年,国連人権委員会(2006年国連人権理事会に改組)は「死刑廃止に関する決議」を行い,その決議の中で日本などの死刑存置国に対して「死刑に直面する者に対する権利保障を遵守するとともに,死刑の完全な廃止を視野に入れ,死刑執行の停止を考慮するよう求める」旨の呼びかけを行っている。このような状況の下で,死刑廃止国は着実に増加し,1990年当時の死刑存置国96か国,死刑廃止国80か国(法律で廃止している国と過去10年以上執行していない事実上の廃止国を含む。)に対し,2007年8月8日現在,死刑存置国67か国,死刑廃止国130か国と,死刑廃止が国際的な潮流となっていることは明らかである。 更に,2007年5月18日に示された国連の拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解・勧告においては,我が国の死刑制度の問題が端的に示された上で,死刑の執行を速やかに停止するべきことなどが勧告されているが,それにもかかわらず今回の死刑の執行はなされたものである。 我が国では,4つの死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)について再審無罪判決が確定し,死刑判決にも誤判が存在したことが明らかとなっている。しかし,このような誤判を生じるに至った制度上,運用上の問題点については,何ら抜本的な改善が図られておらず,誤まった死刑の危険性は依然存在する。しかも,死刑と無期の量刑について明確な判断基準が存在せず,量刑判断についての誤判のおそれも指摘されているところである。 このような状況を踏まえ,日本弁護士連合会は,2002年11月,「死刑制度問題に関する提言」を発表し,死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし,また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間,死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱した。 特に2009年からの裁判員裁判の実施を控え,今,死刑制度の存廃について国民的議論を尽くすことは極めて重要であると考える。 そこで当会は,改めて政府に対し,死刑制度に関する情報を広く公開することを要請するとともに,死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間,死刑の執行を停止するよう,強く要請するものである。
2007(平成19)年9月6日 横浜弁護士会 会長 山本 一行
このページの先頭へ