ページの先頭です。
本文へジャンプする。
サイト内共通メニューここまで。

会長声明・決議・意見書(2007年度)

国民の政治活動等に対する自衛隊の情報収集活動の中止を求める会長声明

2007年07月23日更新

2007年6月6日、陸上自衛隊の情報保全隊が、2003年から2004年にかけて、自衛隊イラク派遣反対の運動などの情報を収集・分析していた内部文書が存在するとの報道がなされ、政府もそうした情報収集活動を行っていたことを認めている。その情報収集の対象は41都道府県の290以上の団体や個人に及んでおり、当会会員も加入している青年法律家協会神奈川支部、自由法曹団神奈川支部、神奈川労働弁護団及び社会文化法律センター神奈川支部4団体の共催で2004年1月26日に行われた自衛隊イラク派兵反対の集会や、沖縄弁護士会が2004年に行った自衛隊イラク派兵反対のビラ配付なども対象になっていた。この文書には、活動の内容や集会の日時、場所、参加人数、講演者等の固有名詞やビラやスピーチの内容まで具体的に記されており、一般的な情報収集の域を超えた「反自衛隊活動」に対する監視という感が否めないものである。

防衛省はこうした情報収集について、イラク派遣への反対運動から自衛隊員と家族を守るためなどと説明しており、この文書の存在が明らかになった後も、こうした情報収集の違法性を否定し、「国民は平等に情報収集の対象になりうる」とする久間防衛相(当時)の発言や、今後も情報収集を続ける考えであるという守屋事務次官の発言なども続いている。

しかし、国民が自由に政治的意見を述べ、特に時の政府の方針に反対の意思を表明することも躊躇なく可能であるということは、民主主義の根幹をなす基本原理である。自衛隊という日本で最大の武力を有する組織の一機関が、政府の方針に反する集会等の情報を収集し監視するという事態は、国民の自由な政治的意思表明に対する不当な圧力となりかねず、表現の自由・集会の自由に対する萎縮効果を生むもので、厳に慎まれなければならない。

また、情報保全隊の任務は「自衛隊の機密情報の保護と漏洩の防止」とされている。上記の情報収集が、その任務とは全く異なることは明らかである。それは、個人情報は利用目的を特定しそれに必要な限度で保有するという行政個人情報保護法の趣旨にも反する。さらに、本来文民による厳格な統制が行われるべき自衛隊が、法律上の根拠もなく国民の情報を集め監視するという点で、文民統制の観点からも問題が大きいと言わざるを得ない。

横浜弁護士会は、今般明らかになった自衛隊の情報収集活動について、本会の会員や他の弁護士会がその対象とされたことに抗議するとともに、それが上記のとおり民主主義の根幹に関わる極めて危険なものであることを指摘し、政府及び自衛隊がこのような活動を今後も行わないよう強く求めるものである。


2007(平成19)年7月19日
横浜弁護士会
会長  山本 一行

 
 
本文ここまで。