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会長声明・決議・意見書(2007年度)

弁護人への脅迫を許さず、弁護活動の自由を守る会長声明

2007年07月20日更新

現在広島高等裁判所において,山口県光市で当時18歳の元少年が主婦と長女を殺害したとされる,いわゆる「光市母子殺害事件」の審理が行われている。

この裁判に関しては,さきに日本弁護士連合会あてに被告人弁護団を脅迫する書面等が送られてきたのに続いて,今月になって,新聞各社にも同様の脅迫文が送られてきたとされているが,当会は,このような事態を深刻に受け止め,ここに改めて,不当な脅迫から弁護士と弁護活動の自由を守る決意を表明する。

日本国憲法第31条は,「何人も,法律の定める手続によらなければ,その生命若しくは自由を奪はれ,又はその他の刑罰を科せられない」として,適正手続の保障を規定するとともに,第37条第3項において,「刑事被告人は,いかなる場合にも,資格を有する弁護人を依頼することができる」と規定し,被告人の弁護人依頼権を保障している。被告人に適正な裁判を受ける権利を保障するため,いかなる場合であっても,弁護人を依頼する権利が保障され,十分な防御の機会が与えられなければならない。これは,人類が歴史を通じて確立してきた大原則であり,弁護人は,被告人のために最善の努力をすべき責務を負っているのである。

価値観が多様化し,複雑な権利関係が鋭く対立する現代において,国内外を問わず,力によらず言葉により基本的人権の擁護と社会正義の実現を目指す弁護士の役割は,民主主義の基盤として,ますますその重要性を増している。

国連の「弁護士の役割に関する基本原則」も,第1条において人権と基本的自由を適切に保護するため,「すべて人は,自己の権利を保護,確立し,刑事手続のあらゆる段階で自己を防御するために,自ら選任した弁護士の援助を受ける権利を有する」と定め,第16条において「政府は,弁護士が脅迫,妨害,困惑あるいは不当な干渉を受けることなく,その専門的職務をすべて果たし得ること,自国内及び国外において,自由に移動し,依頼者と相談し得ること,確立された職務上の義務,基準,倫理に則った行為について,弁護士が,起訴,あるいは行政的,経済的その他の制裁を受けたり,そのような脅威にさらされないことを保障するものとする」と定めている。

当会は,広く市民と,弁護士及び弁護活動に対する妨害や脅迫が,憲法が保障する被告人の弁護人依頼権を踏みにじる卑劣な行為であり,民主主義への挑戦であるとの共通の理解に立って,今回の脅迫行為に対し強く抗議するとともに,弁護活動の自由を守るため,改めて全力を尽くす決意である。
 


2007(平成19)年7月19日
横浜弁護士会
会長 山本 一行

 
 
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