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会長声明・決議・意見書(2007年度)

割賦販売法の改正に関する意見書

2007年04月05日更新

第1 意見の趣旨

割賦販売法(以下「法」という。)につき,次の諸点を踏まえて改正するよう意見を述べる。
 

  1. 不適正与信防止義務(加盟店管理義務)と違反時の民事的効果の法定

    クレジット会社の不適正与信防止義務(加盟店管理義務)を法文上に明記し,同義務違反の場合につき,クレジット会社の請求権を制限するとともに,損害賠償責任などの民事的効果も明記する。
  2. 抗弁対抗の効果・適用範囲を拡大

    クレジット会社に対する抗弁対抗の効果を,未払金の支払停止にとどまらず(法30条の4),既払金の返還請求義務の発生にまで,拡大する。

    上記抗弁対抗規定の適用を除外する政令で定める金額に満たない支払総額の取引(法30条の4第4項1号),顧客にとって商行為となる取引(法30条の4第4項2号),販売業者等がその従業者に対して行う取引(法30条の6,8条5号)の規定を削除する。
  3. 過剰与信禁止義務と違反時の民事的効果の法定

    クレジット会社に実効的な過剰与信規制を行うとともに、過剰与信規制に違反したクレジット契約についてクレジット会社の請求権制限及び既払金の返還請求義務の発生という民事的効果を法文上明記すべきである。
  4. 割賦要件の撤廃

    割賦払い要件を撤廃し,1回払いや2回払いのクレジット契約も適用対象とすべきである。

    政令指定商品制を廃止する。


第2 意見の理由
 

  1. 近年,クレジット取引が急速に拡大し,現在,40兆円を超える規模へと拡大しているため,クレジット取引及びクレジット事業者の役割が拡大している。

    他方,近時,高齢者を狙った不必要な住宅リフォーム工事や布団・呉服等の次々販売などによるクレジット消費者被害事件が大きな社会的問題となっている。神奈川県においても、ココ山岡弁護団、ジェイメディア弁護団、アイデック弁護団、愛染苑山久弁護団、絵画商法弁護団が結成されている。

    近時、社団法人全国信販協会が「個品割賦における取引の取引の健全化にむけた対応について」(与信取扱ガイドライン等の策定)を出し、問題のある商品(業種)について、一定のガイドラインを出したのも、クレジット取引において、問題取引が多数存在していることを物語るものである。

    そこで,消費者保護を図る必要性から,「意見の趣旨」のとおり,割賦販売法の改正を求めるものである。
  2. 不適正与信防止義務(加盟店管理義務)と違反時の民事的効果の法定について

    クレジット契約は,クレジット会社が商品等販売契約の締結過程や履行場面に関与することはほとんどなく,加盟店である販売業者等が,クレジットによる販売契約を締結すればするほど,クレジット会社の売上が増大するという構造になっている。

    現行法上、不適正与信防止義務(加盟店管理義務)が必ずしも明示されていないため、クレジット会社としては、少々問題のある加盟店の取引について、目をつぶって調査をせずに与信を続ければ、それだけ売上が上がることとなる。また、仮に加盟店の問題性に気付いたとしても、クレジット会社としてはなるべく問題加盟店を延命させ、徐々に債権回収をするほうが有利であるため、加盟店を管理する動機付けも存在しないという問題がある。

    さらに、現行においても不適正与信防止義務については様々な通達があるがこのような通達があってもクレジットを利用した悪質販売が減少する兆しは全くない。したがって、不適正与信防止義務(加盟店管理義務)を割賦販売法上明記するとともに、併せて民事上の効果を付与することによって、その実効性を図るべきである。
  3. 抗弁対抗の効果,適用範囲を拡大について

    現行割賦販売法は,第30条の4において,抗弁対抗の効果として,購入者の支払金の支払停止についてのみ規定している。

    しかし,この規定のみによると,抗弁権主張の根拠となる販売契約等に関する問題が,支払途中のどの段階で発覚したかによって,購入者の救済範囲が異なることになってしまい,極めて不合理である。

    また、クレジット会社が前記の不適正与信防止義務(加盟店管理義務)を尽くしていればクレジット会社はそのような悪質販売が発生するのを未然に防止することができる。したがって、同条の抗弁対抗の範囲が既払い金に拡大したとしても、クレジット会社に過剰の負担を強いることにはならない。

    そして,上記事情は,現行割賦販売法が,抗弁対抗規定の適用を除外している政令で定める金額に満たない支払総額の取引(法30条の4第4項1号),顧客にとって商行為となる取引(法30条の4第4項2号),販売業者等がその従業者に対して行う取引(法30条の6,8条5号)についても,同様にあてはまるから,これらの規定は削除すべきである。

    最近では,ジェイメディア及びアイデック被害においても、顧客の商行為性が問題になっており、愛染苑山久事件においても一部、顧客の従業員性が問題になっている。例外を作れば悪質加盟店はこのような例外を奇貨として新たな悪質商法を作り出すから、このような例外を設けるべきではない。
  4. 過剰与信防止措置と違反時の民事的効果の法定について

    現行割賦販売法38条は,割賦販売業者等に対し,信用情報機関を利用する等し,購入者の支払能力を超える与信をしなよう努めなければならないという過剰与信を防止する努力規定を置いている。

    しかし,現実には,年金収入しかない高齢者に対して,クレジット取引を利用して,不必要なリフォーム工事や呉服などを次々と販売する事件等が後を絶たない。特に,平成18年9月に破産開始決定を受けた「たけうち」グループの事件は,定期的な支払能力のない高齢者や若年者に対して,高額な呉服等を次々とクレジットで購入させており,過剰与信による被害事例であるといえる。

    このように,現実は,現行割賦販売法38条の努力規定のみでは,不十分であることが明らかである。

    昨年度、貸金業規制法が改正され、その中で過剰与信規制が法文化されている。貸金業以外の分野でも統一的な過剰与信規制を定め、ひいては統一消費者信用法を実現する気運が高まっている。当面、クレジットの場合においても実体に合った過剰与信規制を定めるべきである。
  5. 割賦販売法の規制対象範囲の拡大について

    まず,現行割賦販売法は,規制対象としているクレジット取引を,「2か月以上の期間,かつ3回以上の分割」の支払いによる場合,又は「あらかじめ定められた方法により算定した金額」の支払い(いわゆるリボルビング払い)による場合に限定している(法2条1項1号・2号)。

    しかし,近時,判断力が不十分な高齢者に対する,不必要な高額のリフォーム契約や高額な呉服販売契約などにおいて,翌月1回払いで契約させるなど,割賦販売法の適用を免れること意図しているとも言える事例が増加している。そして,全クレジット取引のうち,現行の割賦払い要件に該当しない取引が,7割強を占めるという割合になっている。

    そもそも,割賦販売法が,クレジット取引の公正を図ることを目的としている一方で,クレジット取引の多様化と量的拡大に伴い,金融知識,法律知識に乏しい一般消費者保護を図ることを目的としていることからすれば,支払回数によって規制を及ぼすか否かを区別する合理的理由はないといえる。

    そこで,割賦払い要件を撤廃し,1回払いや2回払いのクレジット契約も適用対象とするべきである。

    次に,現行割賦販売法は,政令で指定商品等を特定して,規制対象を限定している。

    しかし,この政令指定商品制によると,クレジット取引における対象が指定商品等以外の商品等の場合に,クレジット消費者被害が頻発しても,被害の後追い的に,政令で追加指定するという場当たり的な対応となってしまい,クレジット消費者被害に対する被害回復や被害防止を図ることができない。

    前記のように,割賦販売法の目的が,クレジット取引の公正化と一般消費者保護にある以上,クレジット取引全般を規制対象とする必要がある。

    仮に,割賦販売法の適用に馴染まない商品等があるとしても,適用除外品目としてネガティブリストを作成すれば,十分に対応することができる。

    それ故,政令指定商品制を廃止するべきである。


2007年3月29日
横浜弁護士会 会長 木村 良二

 
 
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