2007年02月01日更新
平成19年1月30日,いわゆる中国残留孤児国家賠償訴訟について,東京地方裁判所は,「早期帰国実現義務」及び「自立支援義務」そのものを認めず,原告らの請求を全面的に棄却する判決を言い渡した。 原告ら中国残留孤児(以下単に「残留孤児」という)は,幼くして満州の地に取り残されてから現在に至るまで,約60年間の長きにわたり,日本人であれば当然に有すべき権利を侵害され続け,帰国後も6割を超える残留孤児が生活保護を受給するという悲惨な状況で生活し,さらに,老後の生活にも不安を抱えている。全国には約2500名の帰国した残留孤児が生活しているところ,神奈川県在住の約200名を含む残留孤児が東京地方裁判所へ提訴したのを皮切りに,15ヶ所の地方裁判所に,総数2000名を超える残留孤児が本件と同様の訴訟を提起している。 ところが,本判決は,原告ら残留孤児の被害の実態から目を背け,日本人としての尊厳の回復を求める原告らの願いを退けた。 日本弁護士連合会は,1984年の人権擁護大会で,「中国残留邦人の帰還に関する決議」を採択し,残留孤児を含む中国残留邦人の日本国籍取得手続を速やかに整備して早期帰還を実現することや,自立を促進する特別の生活保障をするなどの特別立法を含む諸措置を速やかに講ずることを求めた。また,2004年3月には,人権救済申立を受けて,日本弁護士連合会が国に対して,帰国促進策等の徹底や戸籍回復・国籍取得手続の改善のほか,生活保護によらない生活保障給付金制度の創設や日本国民が受給する平均金額以上の年金が受給可能となる所要の立法措置を講ずることなどを勧告している。 横浜弁護士会は,国が原告ら残留孤児に対する責任を速やかに認めることを願うものであるが,残留孤児のほとんどが高齢となっている現状において,その生活支援の必要性があることは紛れのない事実であり,そのための抜本的な支援策の実現が急がれる状況にあることにかんがみ,政府及び国会は,このような状況を重く受け止め,速やかに残留孤児の老後の生活保障など支援施策の抜本的な見直しや立法措置を行うなど施策を実現することを強く求めるものである。
2007年1月31日 横浜弁護士会 会長 木村 良二
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