2006年04月13日更新
政府は、3月13日、「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案」(以下「本法案」と言う)を国会に提出した。昨年5月成立した「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」では、既決部分の立法化が先行し、未決部分については今国会へ先送りされてきた経緯がある。本法案は、残された未決拘禁者と死刑確定者の処遇に関する立法である。3月24日には、衆議院本会議で趣旨説明がなされ、衆議院法務委員会で審議も始まっている。 未決拘禁法の最大の問題は、代用監獄についてどのように規定するかである。代用監獄の廃止は、当会を始め日本弁護士連合会の長年の要求であった。代用監獄についてどのように制定するのかが注目されてきた。ところが、本法案では、代用監獄が廃止されなかった上に廃止の方向性すら示されてはいない。 本法案は、「都道府県警察に留置施設を設置する」(14条)として、法律で初めて警察留置場の設置根拠を認め、警察が警察本来の業務として警察留置場を設置し管理することを認めるに至った。更に、この警察留置場に本来刑事施設に収容すべき被勾留者を「刑事施設に収容することに代えて、留置施設に留置することができる」(15条1項)ことを認めている。代用監獄の存続を認めたのである。その代用監獄に収容される被勾留者には、被疑者段階の被勾留者と裁判中の被告人も含まれており、裁判中もなお代用監獄に収容することが出来るとすることは非常に問題である。 代用監獄は、自白強要の道具として使われ、えん罪の温床と言われてきた。今なお、代用監獄での人権侵害事例が数多く報告されている。代用監獄で虚偽の自白を強要され起訴された被告人が公判中も引き続き代用監獄に収容され続けるとしたら、被告人は公判廷において自由な意思で裁判を受けることは出来ないことになる。 本法案について、留置施設視察委員会の設置や不服申立審査機関についての規定を設けられたことは評価出来るとしても、長年にわたって代用監獄の廃止を求めてきた当会としては、代用監獄の存続を前提とする本法案を認めることは出来ない。 1980年(昭和55年)の法制審議会答申は「関係当局は、将来、出来る限り被勾留者の必要に応じることが出来るよう刑事施設の増設及び収容能力の増強に努めて、被勾留者の刑事留置場に収容する例を漸次少なくすること」(漸減条項)を全会一致で採択した。これらの趣旨が本法案に取り入れられるべきである。 横浜弁護士会は、今回の未決拘禁法の立法にあたり、代用監獄の廃止の方向性が明示され、かつ、廃止に至るまでの間、法制審議会答申にある漸減条項に沿った趣旨が法案に規定されることを求めるものである。このことが法案に明記されない限り本法案の成立には反対である。 横浜弁護士会は、未決拘禁制度の抜本的改革と代用監獄の廃止を求めて引き続き総力を挙げて運動を続ける決意である。
2006(平成18)年4月13日 横浜弁護士会 会長 木村 良二
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