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行刑施設の過剰収容の改善を求める会長声明
会長声明・決議・意見書(2004年度)
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行刑施設の過剰収容の改善を求める会長声明
2005年03月25日更新
去る3月11日刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案が閣議決定され、同月14日国会に提出された。これは、既決被拘禁者について、明治41年に制定された監獄法を一新しようとするものであり、平成15年12月22日の行刑改革会議提言を受けたものである。法案は、刑事施設視察委員会の設置、受刑者の外部交通権の拡大、規律偏重の一定の是正姿勢、医療水準の確保等全体的に評価できるものとなっている。
しかしながら、法案には、過剰収容を解消し、受刑者の単独室原則を実現するといった規定が含まれていない。これは、人的、予算的拡充が素早く十分には実現できないとの認識を前提とするものである。
わが国の行刑施設における過剰収容状態は恒常的なものとなっており、刑務所の全国的な収容率は定員の120%程度にも達している。また、職員1人当たりの収容者数も、イギリスの約2.8倍、欧米先進諸外国の中で最も多いアメリカと比較しても約1.4倍であって、職員の負担は極めて大きなものとなっている。
横浜刑務所について言えば、平成12年3月に新築落成式を行ったばかりの新しい施設であり、最近でも収容定員の拡大が行われているが、それでも現状は、1263名の定員に対し118%の過剰収容状態で、定員6名の雑居房に8名を収容し、職員も本来4週8休のところを4週6休でやりくりするなどの実態にある。
こうした過剰収容状態が、収容者のストレスを高め、職員にも余裕がないまま、様々な弊害を生じさせ、効果的な処遇を妨げる基本的な要因になっていることは明らかである。上記行刑改革会議提言も、「現下の過剰収容状態においては、受刑者の処遇に当たる刑務官等の人的体制や、受刑者を収容する施設等の物的体制が限界に達している」という認識のもと、「深刻な過剰収容状態は処遇改善の悪化を招き、受刑者のために適切な処遇を行う上でも支障を生じかねないところから、その改善のため、物的体制の整備を求める」「職員の絶対的不足による執務環境の悪化を解消すべく人的体制の整備、充実を求める」と提言しているところである。
ところで、法案が示している受刑者等被拘禁者の権利義務、外部交通、医療体制、不服申立制度等の処遇方法・内容の改善が今後行われていくに際し、その質を基本的に左右するのは、人的・物的体制の充実であり、これなくしてはいかなる理念も絵に描いた餅になりかねない。
近時の報道によれば、2004年度の補正予算と2005年度の当初予算の措置により、現在の刑務所の収容定員約55,000人を2005年度末までに約66,000人に増やすための対策がとられるとのことである。そのこと自体は一定の前進であるが、犯罪の増加、刑法改正その他の事情による刑の重罰化や長期化等の傾向は、今後もさらに進行するものとみておかなければならない。また、施設の規模・内容に照らした現在の定員の適正なあり方、及び定員と職員数の適正な比率自体が、今後再検討されなければならない。さらに、受刑者の更生のためには適切な分類処遇が望まれるところであり、本来望ましいとされる単独室原則(昼間共同生活・夜間個室の収容形態)を実現していくべきことなど、今後のあるべき処遇方法に即した体制の充実も必要な課題である。
これらの状況及び課題にかんがみれば、わが国の行刑施設の人的・物的体制の格段の充実・整備は、監獄法の改正と並行して追及・実現されるべき緊要な課題である。したがって、上記の予算措置にとどまることなく、今後さらに抜本的な、施設の新増築と大幅な職員の増加のための対策がなされるよう、強く求めるとともに、法案には、過剰収容を解消するうえでも、単独室原則の規定を明記すべきである。
2005年3月25日
横浜弁護士会
会長 高橋 理一郎
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