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会長声明・決議・意見書(2004年度)

日本司法支援センター神奈川支部設立に関する会長声明

2004年09月13日更新

当会は,神奈川県内住民の法的需要に対し,簡易,迅速,適正な法的サービスを提供し,県内住民の権利の拡充,擁護に資することを目的として,1985年12月12日横浜弁護士会総合法律相談センターを創設し,そのセンターの下で県内各地に順次法律相談所を設けてきた。また,県内各地方自治体が運営する法律相談事業に対し,当会会員を相談員として派遣し,あるいは地方自治体に対し,相談事業の拡充を要請するなどして,地域住民の法的需要に適切に対応するための活動を行うとともに,この自治体の法律相談事業を通じてさらに司法的救済を必要とする住民に対しては,当会の総合法律相談センターあるいは財団法人法律扶助協会神奈川県支部との連繋の下で,住民が必要とする司法へのアクセスを拡充してきた。

また,刑事司法の公正さの確保と憲法上保障されている刑事事件の被疑者・被告人の権利を適正に保護するために,被告人については,どの事件ももれなく適切に国選弁護人を選任できるように会をあげて組織的に取組むとともに,被疑者については,これまで国の財政的援助がなされていなかったことから,当会では当番弁護士制度を創設し,日本弁護士連合会及び財団法人法律扶助協会の財政的支援と当会会員によるボランティア精神の下で,被疑者のための弁護制度を整えてきた。

さらに,わが国においては,資力が十分でない者に対する法律扶助制度が貧困であることから,当会では,財団法人法律扶助協会神奈川県支部を人的にも財政的にも支援し,法律扶助活動の拡充に取組んできた。

このように,当会はこれまで全力を傾注して,県内住民に対し,憲法上保障されている裁判を受ける権利を実質的に保障するために努力と工夫を重ねてきた。

他方,日本弁護士連合会では,1990年以来現在まで8次にわたる司法改革宣言をなし,司法を市民にとって身近で,利用しやすく,納得のできるものにすることをめざして,市民のための司法改革を強力に推進し,そのための具体的な施策の一つとして,法律扶助制度の抜本的改革,国費による被疑者弁護制度の実現,公設事務所の設置と法律相談センターの拡充を掲げ,遍く市民が司法へアクセスするための基盤整備の方策を提言してきた。

ところで,このたび第159回国会において,総合法律支援法が成立し,同法により,日本司法支援センター神奈川支部が設けられることになった。同センターでは,相談窓口(相談の受付,情報提供,関係機関等への振り分け業務等)を設け,民事法律扶助,公的刑事弁護の態勢整備,司法過疎対策,犯罪被害者支援,関係機関等との連携確保強化などの業務を行い,2006年10月からその業務を開始する予定になっている。

この制度は,公的費用による刑事被疑者弁護事件の対象範囲が狭いことや民事扶助の対象事件や対象者が拡大されていないことなど,未だ多くの課題が残されているが,当会が取組んできた被疑者段階の弁護や法律扶助が国の責務であることを明確にした点で大きな意義を有する。

また,その理念も,市民の司法へのアクセスを拡充し,憲法上保障された刑事弁護制度を充実強化しようとするものであり,これは,当会及び日本弁護士連合会がこれまで提言し,そして実践してきた目標とも合致するものである。

従って,当会は,今後とも県内の地方自治体等の協力を得て,法の支配の徹底と司法へのアクセスを含む神奈川県内の住民が法的サービスを容易にかつ広範囲に享受できるための制度の整備・充実に努めるとともに,この日本司法支援センター神奈川支部についても,その制度整備の一環として位置づけ,上記残された課題を克服しつつ,真に県内住民の法的需要に応えられる事業・組織として発展させゆくために会をあげて万全の態勢を整え主体的に取り組む所存である。


2004(平成16)年9月13日
横浜弁護士会
会長 高橋 理一郎

 
 
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