2004年07月09日更新
国選弁護人の報酬の支給基準が,昨年に続き,さらに0.47%減額されました。 国選弁護人の報酬は,現在3回開廷を基準に地方裁判所で金8万5600円ですが,現在の制度では,記録謄写料,交通費,通訳料,翻訳料等の実費については一部裁量により認められているに過ぎないことから,事実上弁護人の持ち出しになっています。このような現行制度の下における報酬の減額は,これまで以上に弁護人に必要経費の負担を強いるものです。 刑事事件における国選弁護事件の割合が75%を超えようとし,被疑者段階を含め国費による弁護制度が実現されようとしている今,報酬と費用の区別を曖昧なままにして費用を弁護人に頼る制度では,国民のための刑事手続きは瓦解しかねません。 憲法37条3項に規定する国選弁護人依頼権は,単に弁護人を依頼できれば足りるのではなく,資格を有する弁護人を依頼する権利であり,十分な弁護活動をしてもらえる弁護人を依頼する権利です。被疑者・被告人に対する有効な弁護活動を実質的に保障する意味において弁護人の報酬・費用の確保は必要不可欠です。 現行制度下の報酬基準の減額は,被告人の弁護人依頼権の実質を奪うものにほかなりません。 また,被疑者国選弁護の導入を含む今般の司法制度改革を実現するために財政面での十分な手当が不可欠であるとし,政府に対して,司法制度改革に関する施策を実現するために必要な財政上の措置について,特段の配慮をなされるよう求めた司法制度改革審議会意見書の趣旨に逆行するものです。 横浜弁護士会は,一昨年の報酬基準の2年連続据え置き,昨年の報酬基準の0.9%減額に対し,それぞれ抗議の会長声明を発し,弁護人依頼権の実質的保障の確保を訴えておりましたが,それらの議論はなされず訴えは全く無視されたままです。 そこで,横浜弁護士会として,国選弁護人の報酬の支給基準の減額に断固抗議するとともに,国選弁護人に対して適正な報酬及び実費の支払いがなされることをここに重ねて強く要望致します。 以上
2004年7月9日 横浜弁護士会 会長 高橋 理一郎
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