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会長声明・決議・意見書(2003年度)

特許等の訴訟に関する専属管轄についての会長声明

2004年03月25日更新

民事訴訟法改正が平成16年4月1日に施行されるが、この中には、特許・実用新案・コンピュータープログラム関係の著作権に係る訴訟について東京地裁・大阪地裁の専属管轄にする規定が盛り込まれている。専属管轄とは、当該裁判所以外では裁判ができないということであるから、地方在住者や地方企業が地元の裁判所で裁判を受けられなくなる事を意味する。たとえば、神奈川県はもとより、北海道や九州の市民・企業でも、特許等の訴訟は必ず東京・大阪の裁判所が管轄することになる。


しかしながら、改正前の民事訴訟法でも、東京地裁・大阪地裁に全国の事件の選択的管轄権を認めており、市民や企業が東京・大阪での裁判を望むならばそれも可能であったのだから、東京・大阪に限ろうとする今回の改正は、市民・企業からおよそ地元での裁判を受ける権利を奪うものとなるのである。


これにより、今後は上記の知財関係紛争でさほど高額とはいえない事件が地方企業と東京・大阪の企業との間で発生すると、費用倒れの恐れから、地方企業の泣き寝入りになる可能性が予想される。


また、上記の知財関係訴訟が東京・大阪以外で争えなくなると、地方から知財関係に詳しい弁護士を減少させていき、地方企業が知財問題について気軽に相談できる体制がなくなってしまうことも予想される。


こうした現象は地方企業の活力も奪う事となり、東京・大阪への経済の集中をますます加速する懸念すらある。


地方から知財関係事件の管轄を奪うことは、地方企業の知的財産権の保護がないがしろにされる事態を招きかねず、政府のすすめる知財立国構想に逆行するものでもある。


今般の民事訴訟法改正に際して、衆議院法務委員会付帯決議第5項は、地方在住者の裁判を受ける権利が不当に害されることがないよう電話会議システム及びテレビ会議システムを利用した訴訟手続の制度並びに移送制度の趣旨の周知徹底を図ることを求めており、参議院法務委員会付帯決議第4項は、その他に、今後の知的財産訴訟への体制強化等の状況を踏まえて必要な場合には見直しを行うことを求めている。


当会は、上記参議院付帯決議に基づき、できる限り早い時期に東京・大阪の専属管轄を廃止し、広く各地で特許等の訴訟が行えるように再度の法改正を求めるものである。
 

平成16年3月25日
横浜弁護士会
会長  箕山 洋二

 
 
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