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会長声明・決議・意見書(2002年度)

新司法試験の受験資格に関するいわゆる予備試験の在り方についての会長声明

2003年02月14日更新

横浜弁護士会
会長 池田 忠正


平成16年4月には法科大学院が開校され、同時に法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度が始まる予定となっている。

新しい法曹養成制度のもとでは、法科大学院の修了者に新司法試験の受験資格が与えられることになるが、同時に、予備試験によって法科大学院修了者と同等の能力を有することが確認された者にも新司法試験の受験資格を与えるといういわゆる予備試験が制度化され、今後この予備試験の合格者の割合、人数をどの程度にするかという議論が行われることになる。

かつて当会は、法科大学院制度が導入された場合においても、法科大学院修了者以外の者に対して法曹への道を閉ざすべきではないという趣旨の意見書を作成公表したことがある。これは、主として経済的理由で法科大学院に入学できない者や、すでに社会人として活躍している人にも法曹資格取得の道を残し、法曹の多様性を確保しようという発想に基づくものであった。

しかし、予備試験合格者の割合、人数を大きくし過ぎることは、多大の弊害を伴う危険があり、一方で、かつて当会が意図した法曹の多様性確保という目的を予備試験によって達成できるかどうかにつき多大の疑問が残ると言わざるを得ない。予備試験の受験資格に限定を設けないとするとすれば、それは法科大学院を経ずに短い期間で法曹資格を取得する道として、むしろ法曹を目指す者の第一次的な道となり、予備試験に合格しなかった者だけが法科大学院に進むということになりかねないであろう。また、予備試験に合格する者は、前述したような経済的弱者、社会人が中心となることは期待できず、むしろ予備試験受験に専念できる環境にある法学部在学生が中心となることが容易に予測できるのである。

バイパス制度は、「飛び級」に類した制度として機能するものと考えられ、プロセス重視の法曹養成という法科大学院構想とは根本的に相いれないものになりかねない。

そもそも司法制度改革審議会が提唱した新しい法曹養成制度とは、創造性豊かな法曹、国際・先端分野に通じた専門家をめざすという観点から、司法試験という「点」の選抜のみの現行制度から、法科大学院を中核とする「線」への教育に転じようとしたものであり、試験に合格すれば多数の者に「近道」を認めてよいという発想自体が、審議会の基本的な考え方に反するものである。

「バイパス」を設けるとしても、それはあくまで限定的なものであるべきであり、予備試験の合格者数はできる限り少ない数に設定すべきである。

一方で、経済的弱者、社会人に対して法曹の道を確保すべきであるのは言うまでもない。それは「バイパス」の拡大によってではなく、全国的規模での夜間法科大学院の設置、奨学金の充実によって実現されるべきであろう。

横浜弁護士会は、司法制度改革審議会の意見書に示されたプロセス重視の法曹養成とそれを担う法科大学院の充実、多様性の確保に向けて、今後とも全会挙げて取り組む決意である。

 
 
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