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会長声明・決議・意見書(2002年度)

簡裁判事・副検事経験者に「準弁護士」資格を付与することに反対する会長声明

2002年12月16日更新

横浜弁護士会
会長 池田 忠正


現在、最高裁判所及び法務省は、簡裁判事・副検事の経験者に対して、概ね下記のような弁護士資格の付与を提案している。

 

  簡裁判事経験者 副検事経験者
民事関連 ①簡易裁判所における民事訴訟等の代理権
②法律相談(訴額による制限なし)
③裁判外の和解代理(同上)
①刑事事件の示談
②犯罪被害者の損害賠償
  請求事件(訴訟の場合は簡裁事件に限る)
刑事関連 ①簡易裁判所における、被告人の弁護
②被疑者弁護(法定刑に死刑または無期懲役のあるものを除く)
③上記①②に関わる示談
④刑事事件に関する法律相談
同左

 

しかし、この提案には、次の理由により、強く反対する。
 

  1. 上記のとおり、この提案は、現在の弁護士資格の他に、取扱業務の範囲を限定した2種類の弁護士に準じた資格を新たに作り出すものである。そして、上記の表から明らかなように、利用者からみて、簡裁判事経験者と副検事経験者の実際に取り扱える範囲が極めて分かりにくい。例えば刑事弁護についていえば、両経験者とも捜査段階の弁護はできても、公判段階では簡裁固有の事件しか弁護できないなど、利用者の混乱を招くおそれがある。

    また、平成15年4月からは、司法書士が民事事件に関する簡易裁判所の代理権が付与されることとなっているが、簡裁判事・副検事経験者に対しては、現行制度上でも司法書士の資格が与えられる途が確保されているのであるから、新たな資格制度を設ける必要性は乏しい。
  2. 簡裁判事・副検事の有する専門性についても問題がある。副検事は検察官としての経験を有し、簡裁判事は簡裁訴訟業務についての専門性は有しているが、両者とも、民事事件の代理人としての経験はなく、刑事弁護の司法修習および実務の経験が全くない。
  3. 「簡裁判事・副検事の経験者」の多くは、定年退官する者である。その人数は年間各数十人という数である。しかも、その年齢は、簡裁判事の定年が70才、副検事の定年が63才ということからすれば、多くの該当者は高齢者であると言わざるを得ない。これらの者の活用という観点から今回の提案がなされているものの、実務に対する実践的な戦力として大きな期待を持つことはできない。

    簡裁事件を担当する弁護士数の不足という観点から見たとしても、司法書士の簡裁代理権の付与、国費による被疑者弁護制度の実現、そして弁護士数の飛躍的増加が予定されていることなどにより、充分に対応が可能となるものである。
  4. 以上のような観点から見て、今回の提案についての必要性も合理性も乏しいことは明らかである。むしろ、司法制度改革の名を借りた、定年退官者の優遇措置、天下り先の確保という側面が著しく強いものというべきであり、強く反対する。
 
 
本文ここまで。