2002年05月23日更新
平成14年(2002年)5月23日 横浜弁護士会会長 池田 忠正
平成12年10月1日から民事法律扶助法が施行されました。この法律は、国民にとって今よりもっと利用しやすい司法制度を作り上げていくために、民事法律扶助事業を国の責任で発展させていこうとするものです。
ところが、この法律の施行早々から憂慮すべき事態がおきています。それは民事法律扶助事業の運営に必要な国の補助金が、極めて不充分な金額しか認められないということです。
平成13年度の補助金総額は約28億5500万円(うち、代理援助については約22億1000万円)でしたが、この補助金額では到底足りませんでした。そこで財団法人法律扶助協会のほとんどの支部が、平成13年度末には、援助申込みを受け付けても決定を平成14年度に遅らせるなどしたのです。
この現実にもかかわらず、平成14年度予算では、平成13年度とほぼ同額の約30億円(うち、代理援助については約22億9800万円)の補助金しか認められませんでした。ところが、法律扶助の制度の存在が国民に中に浸透するにつれて制度の利用を希望する国民は激増しており、平成14年度には、例えば、代理援助について前年度に比べて3割程度も増加することが見込まれているのです。このため平成14年度においても、秋以降、ほとんどの支部で援助申込受付の中止という深刻な事態が予想され、そのため当地の神奈川県支部においても、年度初めから止むなく一部の援助要件を厳格にして、援助決定数を減らす措置をとらざるを得なくなっているのです。
民事法律扶助事業を国の責任で発展させていくという民事法律扶助法の定めは、国が国民に対してなした約束に他なりません。
現在の事態は、まさに国自らがこの約束を反古にし、民事法律扶助事業の健全な発展を頓挫させようとするものです。
またこの事態は、現在、国をあげて取り組んでいる司法制度改革の流れにも著しく逆行するものです。さらには、民事法律扶助事業に対するわずかな予算すら充分につけられないならば、司法制度改革全体すらも、財政的裏付けの欠如によって著しく不充分なものに終わる危惧が大きくなった、と言わざるを得ないのです。
民事法律扶助事業の行方は司法制度改革全体の試金石です。
そして、生まれたばかりのこの民事法律扶助事業は、今、危機に瀕しています。
わたくしは、この事態に際し、民事法律扶助法第4条により民事法律扶助事業の健全な発展に努める責務を負う横浜弁護士会の代表者として、国に対し、司法制度改革と法律扶助制度改革の意義を改めて確認し、直ちに必要な財政措置を講ずることを強く求めるものです。
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