2000年03月15日更新
昨年夏に「国旗及び国歌に関する法律」が成立して、初めての卒業式・入学式を迎える。
当会は、昨年7月26日、右法案が衆議院で可決された際「国旗・国歌が法制化されれば、(中略)学校現場においても、義務の強化につながるおそれが極めて大きい」「国旗・国歌の法制化は、憲法の保障する思想・良心の自由に対する侵害の危険性が極めて強いことを指摘せざるを得ない」との会長声明を発した。
「国旗及び国歌に関する法律」には義務づけ規定は定められておらず、法案審議の際の政府答弁においても、特に教育現場において国旗・国歌を強制してはならないことが強調されていた。
日の丸・君が代については国民の中で多様な意見が存在し、そうした個人の意見を無視して「強制」することは、憲法で保障する思想・良心の自由の侵害になることは明白である。
ところが、現在神奈川県下において極めて憂慮すべき事態が進行している。一例をあげれば、昨年11月神奈川県教育委員会が県立学校校長全員に対し調査用紙を配布して、卒業式・入学式で「国旗掲揚と国歌斉唱をするという明確な意思表示をしたか」「教職員の反対・妨害行動はあったか」等の調査を指示し、同12月横浜市教育委員会が市内全校の市立学校長に対して「卒業式・入学式等における国旗・国歌に対する対応シート」を配布して同様の調査を指示した。更に同12月21日神奈川県議会は、入学式・卒業式などにおいて国旗掲揚・国歌斉唱が徹底されることを強く要望することを内容とする「学校における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する決議」を採択した、等である。
神奈川県におけるこうした一連の事態は、「調査」「要望」の名のもとに、平成11年度卒業式、平成12年度入学式において、国旗掲揚・国歌斉唱を実質的に強制するものに他ならない。
上記のような神奈川県下で進行している動きは、生徒・児童、父母、並びに教職員の思想・良心の自由を侵害する危険が極めて強いものであることを指摘せざるを得ない。
当会は、卒業式・入学式において、国旗掲揚・国歌斉唱が強制されることなく、卒業・入学を迎える児童・生徒が心から祝福される式典となるよう運営されることを強く求めるものである。
2000年(平成12年)3月15日 横浜弁護士会 会長 岡本 秀雄
このページの先頭へ