1999年10月21日更新
法務省は、9月10日、3名の死刑確定者に対して死刑の執行を行ったことを発表した。今回の執行は、昨年11月19日に3名の死刑執行が行われたことに続くもので、1993年3月に、それまで3年4か月事実上の執行停止状態から死刑執行が再開されて以降、6年半の間に合計34名の死刑確定者に対し死刑が執行された。
死刑制度についての国際的潮流は廃止に向かっている。国連では、1989年、総会において死刑廃止条約が採択され、また、死刑に直面する者の権利保護について特別の保護と権利の保障を求める決議がなされた。また、国際人権(自由権)規約委員会では、1997年と1998年に、締約国に死刑廃止条約の批准を呼びかけるとともに、死刑存置国に対し、死刑該当犯罪の制限、死刑廃止を目指しての執行停止、死刑に関する情報公開を呼びかけることを決議した。
日本政府は、国際人権規約委員会に対し、日本では死刑廃止への国民的コンセンサスが得られていないと報告しているが、これに対し、同委員会は、1993年と1998年と二度にわたり、死刑廃止への措置と死刑確定者の処遇改善を勧告した。
死刑制度に関する国民的コンセンサスを得るためには、まず、国民に対して、死刑に関する情報を公開するとともに、死刑の犯罪抑止力、死刑に代わる最高刑及び被害者側の心情への配慮など、死刑制度に関する問題点を明らかに提示し、国民の間で論議を尽くすことが必要である。
当会は、これまでも死刑執行に対して会長声明を発表し、死刑制度の存廃についての国民的議論が尽くされるまでの間死刑執行を一時停止するよう求めてきた。また、超党派の衆参両議員による死刑廃止推進議員連盟が法務大臣に対し死刑執行に抗議するなど国会での論議の機運も高まりつつある。被害者の救済の問題については、各方面で検討され、制度化がすすめられている。
当会は、このような状況下において、今回も死刑執行がなされたことに強く遺憾の意を表明するとともに、政府及び国会において、早期に死刑制度に関連する問題点について議論を深めることを要望し、さらに、法務大臣に対し、死刑制度についての情報を公開すること、死刑制度に関する国民的議論が尽くされるまで死刑の執行を差し控えること、及び死刑確定者の処遇改善に努めることを強く要望するものである。
1999年(平成11年)10月21日 横浜弁護士会 会長 岡本 秀雄
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