1999年07月26日更新
近時の勾留の実務は、罪証隠滅のおそれを理由とした勾留率の上昇、保釈率の極端な低下、接見禁止の濫発が見られるなど、刑事訴訟法の理念からの乖離が顕著である。被告人は、事実を否認すると、長期間にわたり身体の自由を奪われることになりかねない深刻な事態が生じている。
安田好弘弁護士に対する保釈却下は、近時の刑事訴訟法の理念に反した実務の一例ということができる。東京高等裁判所は本年6月11日午後、東京地方裁判所が同日午前に出した同弁護士に対する保釈許可決定を取消した。さらに、本年7月6日にも、東京高等裁判所は同月5日に東京地方裁判所が再度認めた保釈決定を再び取消した。最高裁判所は6月23日に引き続き7月14日も、再度特別抗告を棄却した。同弁護士は、昨年12月6日強制執行妨害罪を被疑事実として逮捕され、同公訴事実で同月25日起訴されて以来、勾留220日以上に及んでいる。本件公訴事実である強制執行妨害罪は懲役2年以下と定められており、同弁護士に対する勾留はその最高刑の3分の1にもなろうとするもので、それだけをもってしても異常に長期にわたるといわざるをえなない。
本年は、現行刑事訴訟法が制定されて50年という節目の年にあたっている。当会は、刑事司法が、憲法及び刑事訴訟法の規定する適正手続保障という本来の理念に立ちかえって運用されることを強く求めるとともに、その実現のために全力をあげて取り組む決意であることを表明する。
1999年(平成11年)7月26日 横浜弁護士会 会長 岡本 秀雄
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