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会長声明・決議・意見書(1999年度)

組織的犯罪対策に対する3法案に関する会長声明

1999年06月10日更新

本年6月1日、衆議院本会議において、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」案(いわゆる盗聴法案)、「組織犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」案、「刑事訴訟法の一部を改正する法律」案の組織的犯罪対策3法案が、賛成多数により可決された。


盗聴法案は、通信傍受の対象犯罪を薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人に限定するなどの修正がなされた。しかしながら、修正されたとはいえ本法案は、傍受対象が組織的犯罪だけに限定されていないこと、将来の犯罪のための傍受(事前盗聴)、令状に記載されない別件事件の傍受(別件盗聴)、犯罪と関係する会話かどうかを識別する該当性判断のための傍受(予備的盗聴)が認められていること、立会人に捜査機関の違法な盗聴を防止する実質的な権限が与えられていないこと、当事者に通知される傍受記録は刑事記録に使用されうるものだけにとどまっていること、盗聴期間が最大30日と長期であることなどの問題点はなんら解決されていない。


また本法案の審議は、公聴会も開かれず、十分な審議時間も確保されないまま採決・可決されたもので、日弁連ないし当会などが指摘してきた問題点について十分に審議を行ったものとはいえず、基本的人権にかかわる重要法案の審議としては極めて不十分なものといわざるを得ない。


神奈川県においては、日本共産党の緒方国際部長(当時)宅が神奈川県警により組織的継続的に電話盗聴されていた事件が発生し、神奈川県警幹部の承認に基づく組織的盗聴の事実が判決により認定されたにもかかわらず、警察は未だ謝罪しないどころか、その事実を認めようとすらしていない。


従って、本法案によると、捜査機関により無制限に、かつ秘密裏に盗聴が行われ、犯罪とは無関係な多くの私信が捜査機関の監視下にさらされる危惧を拭い得ない。これらは憲法で保障された通信の秘密(第21条2項)、プライバシーの保護(第13条)、適正手続の保障(第31条)、令状主義(第35条)に抵触する疑いが強い。


また、他2法案についても、構成要件が曖昧な組織的犯罪に対する重罰化の問題、広範囲な犯罪類型を対象とし、犯罪収益等などという曖昧な概念を構成要件とするマネーロンダリング規制の問題、被告人の反対尋問権が保障されるかという問題等、指摘される諸問題は解決されないままとなっている。


よって、当会は、上記3法案について参議院において慎重かつ徹底した審議がなされるよう強く求めるものであり、現状のままでの制定には強く反対する。

 

1999年(平成11年)6月10日
横浜弁護士会
会長   岡本 秀雄

 
 
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