1999年9月号(4) |
七月八日(木)午後五時より、附添人実務研修会(少年問題委員会主催)が当会会館五階ホールにて開催された。 | |
今回は、「調査官から見た附添人活動」のテーマで横浜家庭裁判所の中川望調査官を講師に招き、調査官の立場から附添人に望む活動についての話を聴いた。 | |
まず、審判手続は「子どもの育て直し作業」、審判は「子どもと大人社会の出会いの場」であって、附添人は調査官と共に子ども(少年)と大人(審判官)の仲介役であるとの審判観が示された。 | |
そして、附添人は、時には少年を責めなければならない調査官と比べ、より自由な立場で少年に「付き添う」者であり、必ずしも「少年の意思の代理人」ではなく、「まともな社会生活」を望む少年に愛情をもって寄り添って欲しいとの理念を述べた。 | |
続いて、「非行」とは「少年の生き方の象徴」であり、そこから少年のメッセージを読みとり自分の価値観とのズレを常に意識しなければならない、これに対する「処遇」を考えるに当たっては、少年の自我の脆さがどの程度で、これを守り確立させるに、物理的な枠(少年院)か心理的拘束(試験観察や保護観察)か、という観点から考える、と、少年に向き合うに当たっての心構えを話した。 | |
その後、具体的な「附添人活動のプロセス」へと話が進み、まず調査官から情報収集し、次に少年に分かり易い状況説明をすると共に少年の話をよく聞き、少年や保護者の「治りたい」「変わりたい」意欲を掘り起こして少年の置かれている状況を把握する、というプロセスを述べると共に、この環境調整こそ附添人にしか出来ない附添人活動の醍醐味であろうと述べた。そして、出来るだけ調査官との情報や意見の交換をしてほしいとしたうえ、附添人の処遇プランを形成する「意見書」は、附添人の腕の見せ所であり、決して「ベスト」はない処遇について各種比較検討して欲しいと話し、審判後も決定した処遇についての説明や今後の関係等、アフターケアーも必要と述べた。 | |
一方、附添人活動の中で具体的に困った例として、保護者の意向に左右され結果的に少年の自立を妨げた例、社会資源確保のために学校等に圧力を加えてしまう例、近隣の子どもの嘆願書を集めて回った例などが挙げられた。 | |
今回の研修会では、調査官側の「附添人活動観」に触れることができ、会員にとっても、今後の活動にとって大きな糧になったと思われる。 | |
(阿部 雅彦) |
西村公証人(取切り戦)佐藤克洋会員(月例会)が優勝 |
法曹ゴルフ夏の陣 |
井上嘉久前会長杯の取切り戦を兼ねた恒例の夏合宿が、七月二三日、全日空オープンで有名な札幌ゴルフ倶楽部輪厚コース、翌二四日、日本プロマッチプレー選手権のニドムクラシックコース(苫小牧市)で行われた。 |
取切り戦第一日目は、庄司会員が西村好順公証人、武内大佳会員にネット六打差の断然トップ。しかも二位の両者よりハンディキャップが四つ多く二日目朝には、実質一〇打差の一番人気で洋々たるスタートを切った。 |
ところが、毎年ある第一日トップ者の金縛り地獄、さすがの庄司会員も例外ではなかった。残り九ホールで武内会員が二打、西村公証人が五打差に接近、残り六ホールのショートホールでは西村公証人パーとし、ダボの庄司会員、トリプルの武内会員をついに抜き、西村公証人はその後持ち前の集中力を発揮して手堅く回り、四年越しの栄冠を手にした。 |
なお、月例は、二日間を八六、八二のベストグロスで回った佐藤克洋会員がネット六アンダーで断トツ優勝を飾った。 |
(清水 規廣会員) |
「総力戦」の法律相談 | 二班 小宮 玲子 |
(指導担当 野村 和造会員) | |
横浜での弁護修習が始まってからはや二週間がたちました。見るもの聞くものやることなすこと何でも面白いという恵まれた修習生活を送っております。 | |
ちゃんとした訴訟のできる弁護士になりたいという気持ちは以前からあるので、裁判傍聴も起案も楽しんでやっていますが、それと同時に、今一番の興味の対象は依頼者の方との打ち合わせや、接見、法律相談に見えた方との話に同席させていただく時です。 | |
先生の横で、メモをとりながら、相手の方の顔を見ながら、まず必死で事案の把握・整理をして(これがなかなかできない)、その次に自分だったらどう言うかと一応考えてみるのですが、目の前の相手に実際に何を言うのか、何が言えるのか、というところで自分の考え方そのものと一度対面せざるをえないことがあります。自分は今までこういう考え方をしていて、それはそれで上手くやっていけたけれども、果たしてそれをこのままこの人に向かって言ってもいいのだろうかという迷いです(ここで詳しくは言いませんが別に違法なことではありません)。 | |
また、先生の口から発せられる、単なる法律知識から来るものではない数々の「ケア」の言葉にはっとすることも多いです。少々大袈裟な言い方ですが、物事の究極的な解決は(その)人が幸せになることで、そのための手段は何も法律だけではないはずで、ただ、全能ではない法律が手掛かりとしての一端を担えれば、あとはまさに総力戦で、法的解決の遂行に向けて地味に、着実に歩むしかないのかもしれません。 | |
このように厳密には弁護士としてではない部分での手助けが、自分が弁護士であるがゆえにできたりするのはまさに弁護士冥利につきるのではないか、と近い将来の弁護士稼業に大いなる期待を抱いています。そしてその期待にきちんと応えられる自分自身になれるように、日々努力中です…。 |
生の事件の重さを実感 | 二班 今井 理 |
(指導担当 渡邊 利之会員) | |
弁護修習が始まって、もう一ヵ月が経とうとしている。この間、新しい経験の連続で、あっという間に過ぎ去ってしまったという感じである。 | |
しかし、その一方で、研修所で前期中に言われたことではあるが、生の事件の重さを感じさせられる。 | |
例えば、国選弁護事件で記録閲覧をしたときのことであるが、記録を見る限り、その時点では、どう弁護したらよいのか見当も付かないということがあった。しかし、被告人に接見して話を聞いてみると、ただ記録を読んでいただけでは見えてこない、被告人の全く違った面が見えてくる。また、弁論要旨の起案をして先生に手直ししてもらったときのことであるが、先生の起案と見比べてみて、自分の起案が具体性に欠けることに気が付く。説得力が全く違う。これらは、生の事実を重視していないからなのであろう。反省させられる。 | |
また、依頼者との信頼関係を築くことの難しさも感じさせられる。 | |
刑事、民事を問わず、依頼者はなかなか自分に不利なことは話してくれない。先生が丹念に聴いてやっと話してくれるということが多い。短い相談時間の間に、信頼関係を築いて、何でも話してもらうということは、一朝一夕には身に付くものではないと思う。 | |
弁護修習は残り二ヵ月余りしかないが、その間いろいろな事件を見て、それを通じて、右のことを少しでも体得し、また、それとともに自分の進むべき分野を発見していきたいと思う。 |
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《編集後記》 |
本誌は編集会議、紙面割り付け、校正会議を経て皆様のお手許へ届けられます。 |
〆切間際になると本業を忘れて記者気分となることも多々あります。本号で一四〇号となりますが今後ともより良き紙面を目指したく皆様からの忌憚なき御意見・御要望をお待ちしております。 |
デスク 船橋俊司(三九期) |
今号の紙面担当者 |
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一 面 栗田誠之(四一期) | 二 面 浦田修志(四七期) |
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三 面 小沢弘子(四四期) | 四 面 阿部雅彦(四九期) |
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