横浜弁護士会新聞

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1999年12月号(1)

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日弁連業務対策委員会最終答申書について討議
 一〇月二七日、弁護士会館五階大会議室において会員集会が開かれ、司法改革においても重要な位置を占める「広告規制問題」について報告と討議がなされた。併せて弁護士の綱紀確立方策に関わる「業務上預り金の保管方法」についても議論が行われた。
  当日はあいにくの強い雨で、会場に辿り着くのも難儀であったが、水を滴らせながら参加した会員の間では、雨にも負けず、熱心な討論が交わされた。
弁護士の業務広告に関する最終答申書
 集会は佐藤修身副会長の司会で進められ、岡本会長による開会挨拶の後、まずは広告規制問題について、高橋理一郎会員から基調報告がなされた。日弁連弁護士業務対策委員会において業務広告に関する最終答申書の作成に関わってきた同会員は、五月一〇日に日弁連に提出された右答申書について、その作成に至るまでの経緯や英米仏での実情調査の話なども交えながら、具体的な解説を加えた。
 会員には予め最終答申書が資料として配布されており、目を通してきた内容について改めてポイント解説を受けるという形になった。
国民への情報開示の視点
 最終答申書の内容は、従来の規程による広告の原則禁止を一八〇度転換し、原則自由とし、禁止を例外的に定めるというものである。そしてそれは、弁護士の広告というものを国民への情報開示という視点から捉え直すことだという説明が、高橋会員からなされた。弁護士が国民から遠すぎるという批判が高まる中、今や十分な情報を積極的に開示していくことが国民の信頼確保のためにも必要であり、広告を規制する場合も、その規制を国民に対して合理的に説明できるかという観点から考えなければならないということであった。
例外的禁止事項とは
 右観点からの一般的禁止事項として、最終答申書の示す会規改正案は、(1)弁護士の品位または信用を損なうおそれのある広告(2)客観的事実に合致していない広告(3)誤導・誤認のおそれのある広告(4)誇大または過度な期待を抱かせる広告(5)特定の弁護士または法律事務所と比較した広告(6)法令や会則、会規に反する広告、の六項目を挙げており、それぞれの説明がなされた。
 その他、答申書は、広告に関する基本的事項については会規で定め、細かい運用等に関しては運用指針(ガイドライン)によるものとしており、それぞれの案についても説明が行われた。
会場からの質疑・応答
 広告規制の問題は各会員の関心も高いところであり、会場からも発言希望が相次いだ。 事前に意見書を提出していた箕山保男会員からは、「単位会に対する意見照会では無回答の会も多かったのであるから、答申に賛成する会が多数だと早計してはならない」という意見が出された。また、その他にも、「現行規程下でも違反広告のホームページ等を取り締まれないでいるのに、規制を緩めるともっと違反が氾濫するのでは」「原則自由とすると、予防的な規制ができなくなり、実害が生じてからの処理になってしまうのでは」といった声も会場から上がった。それに対して高橋会員からは、「改正の視点は受け手の利益であり、今までの形式的な規制とは違う。普通の弁護士の良識からしても、自由になったからといって違法広告が出回ることはないのではないか。」という見解が述べられた。
業務上預り金口座設置の整備
 引き続いて、もう一つのテーマである「業務上預り金の保管方法」についての討議に入った。森田明副会長から、綱紀確立方策の一環として業務上の預り金口座設置の義務化が要請されるに至った経緯が報告されるとともに、「横浜弁護士会業務上の預り金の取扱いに関する会規」の理事者原案について説明がなされた。
 右原案は、口座開設等の預り金保管方法や弁護士会からの照会などについて規定するものであるが、会場からは、依頼者ごとの口座開設の必要性や照会に対する回答方法についての質問が上がり、さらに検討していく課題が示された。

前橋市にて開催
 日弁連創立五〇周年記念ということになった第四二回人権擁護大会は、一〇月一四日・一五日、全国各地から約一五〇〇人の参加者を集めて、群馬県前橋市において開催された。
 一四日に行われた分科会ごとのシンポジウムでは、「新しい世紀の刑事手続きを求めて−刑事訴訟法五〇年・松江大会から一〇年の軌跡と展望−」「人権と報道−報道のあるべき姿を求めて−」「資源循環型社会をはばむものは何か−あるべき生産者責任の確立を−」という三つのテーマが採り上げられ、それぞれに白熱した議論が交わされた。
 そして一五日の本大会では、刑事司法の現状を憂慮し真に憲法や国際人権法の理念にかなった手続きを求める「新しい世紀の刑事手続きを求める宣言−刑事訴訟法施行五〇年をふまえて−」、報道による人権侵害の防止を目指す「報道のあり方と報道被害の防止・救済に関する決議」、環境破壊への歯止めを生産者主導のリサイクルに求めていく「資源循環型社会の実現に向けて 生産者責任の確立等を求める決議」、少年法改正法案の問題点を指摘し反対する「少年法『改正』法案に反対する決議」をそれぞれ採択し、熱気を帯びた二日間の幕を閉じた。
 次回大会は来年の一〇月五日・六日、岐阜市で開かれることとなっている。

山ゆり
 東海道線に乗り、扉にもたれて立ちながら、見るとはなしに外を眺めていた
 戸塚駅に近づいた頃、野球場が目に入った。少年野球のチームが練習している。少年たちは泥まみれでボールを追っている。そんな風景を眺めながら私は、ふと、自分が見られているような不思議な感覚に襲われた
二十年前、少年の私は、確かにその野球場でボールを追っていた。ひどく暑かった。苛酷な外野ノックにへとへとの泥まみれだった。時折、野球場の脇を電車が通り過ぎた。頭上を越えていったボールを追い、あえぎながら、私は電車を眺め、ぼうっと思った。(あの電車に乗っている人たちの中に、僕らを見ている人はいるのだろうか。)次のボールが飛んで来た。高く舞い上がった白球を追って、私はまた駆け出していた
電車が野球場を過ぎようとする頃、少年の一人がボールをキャッチするのが、窓の遠くに見えた。その姿に私は、二十年前の自分を見ていた。そしてきっと、二十年前の私は、通り過ぎる電車の中に今の私を見ていたのだろう。電車は戸塚駅のホームに滑り込み、ゆっくりと停車した。扉が開き、幾人もの人が降りていった
おそらく人は、タイムトリップができるのだ。かつて向けていた未来への視線と、今向けている過去への視線とがぶつかる、そう、そんな瞬間がある。思い出ではなく、いわば過去と現在との双方向の出会い。懐かしさと鮮やかさの不思議な感覚。そんな時にデジャ・ビュも生まれるのかも知れない
ふと心の中を白球がよぎる。いつか昔に投げたボールが、遥か時空を舞って飛来してくる。私はさりげなく、そして愛おしく、それをキャッチしたのだった。
(畑中 隆爾) 

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