1999年11月号(2) |
財団法人法律扶助協会神奈川県支部 支部長 村瀬 統一 | 民事法律扶助法(仮称)が、次の通常国会で審議制定される見込みとなった。これは、法律扶助事業についての国と弁護士会の責務を明らかにするとともに、その業務は法律扶助協会が行うというものである。施行は来年一〇月とされているが、すでに概算要求として二二億円余が国の一般会計に盛り込まれた。この数年の国庫補助金額が前後五億円であったので、一挙に四倍増となるわけだが、今後さらに増額されるものと思われる。昭和二七年に法律扶助協会を設立し、篤志家や地方公共団体のご寄付を仰ぎながら、弁護士や弁護士会が支え発展させてきた法律扶助事業が、今、大きく変わろうとしている。 |
法律扶助協会は、現在この変革に併せて、組織や人事あるいは運営体制を整備しており、コンピューターによる本部支部間のネットワーク化も含めて、今年度中には全てその作業を完了する。 |
当支部も、横浜弁護士会執行部のご配慮により、当面必要とされる事務所スペースの拡大や担当職員の増員などハード面での新体制への準備はほぼ終えた。しかし、急激に増大する扶助事件を処理するためには、何よりも審査や事件を担当して頂く会員皆様の一層のご尽力にすがる以外にその術はない。 |
ちなみに、当支部の昨年度民事法律扶助としての決定件数は七七五件(全国九、七五五件)で、これは東京、大阪に次ぐ。また、刑事被疑者弁護援助や少年保護事件付添扶助もこのところ急速に伸びている。会員の皆様はもとより、ご寄付を下さった篤志家の方々あるいは地方公共団体の法律扶助に対する深いご理解とご協力の賜物であり、心から感謝申し上げる次第である。 |
ところで、民事法律相談事業の拡充のため、今年度は金一億円の国庫補助金があったことから(来年度はさらに増額予定)、当支部はこれに応じて新しく「嘱託弁護士制度」と「無料法律相談(法律事務所待機制)」の二つの制度を発足させた。 |
先般会員の皆様にそのご案内とご応募方のお願いをしたところ、早速多くの方々からお申し込みを頂戴し、お蔭様でこの一〇月からスタートすることができた。特に「無料法律相談(事務所待機制)」は、民事法律扶助法(仮称)制定後のいわゆる『登録弁護士』として、今後の法律扶助事業推進の中核となるものである。 |
この新制度の内容については、このたび横浜弁護士会新聞に当支部の広告を継続して掲載して頂けることになったので、そちらをご覧頂ければ幸いである。 |
弁護士が、社会の公正をあまねく実現しようとする熱意をもって地域に根差した幅広い活動をしなければ、今われわれが求めている司法改革は、机上の空論とのそしりを受けかねない。その意味で、司法改革の一つの柱として先駆けてスタートすることになる新しい法律扶助事業は、われわれに与えられた試金石といえる。 |
重ねて皆様の厚いご支援をお願い申し上げる次第である。 |
(会長 岡本 秀雄) |
当会会員であった坂本堤弁護士とその家族が、オウム真理教の信者によって尊い命を奪われた事件から一〇年が経過しました。坂本堤さん、郁子さん、龍彦さんのご冥福を心よりお祈りいたします。 |
当会は、坂本一家が行方不明になって以来、坂本弁護士・家族救出対策本部を設置し、集会の開催、街頭署名等さまざまな活動を展開してまいりました。この取り組みには、日弁連や各単位弁護士会のほか、数多くの市民の皆様にご協力をいただきました。あらためて篤く御礼を申し上げます。 |
坂本事件は、オウム真理教の被害者救済を目指す活動の中で起こった弁護士に対する卑劣な業務妨害行為です。かかる行為を二度と許してはなりません。 |
当会は、一九九三年に弁護士業務妨害対策委員会を設置し、積極的にこの問題に取り組んでまいりました。今後も坂本事件の教訓を忘れず、弁護士業務妨害に屈することなく、弁護士の使命である基本的人権の擁護と社会正義の実現のために力を尽くす決意です。 |
自治体法律相談でも受任が可能に 神奈川県・横浜市で実施 |
かねてから協議がなされていた自治体法律相談からの事件受任が、平成一一年一〇月一日から、神奈川県と横浜市の無料法律相談において可能になった。これにより相談者からの依頼があった場合には、担当した弁護士が直接事件を受任できるようになり、とかく敷居が高いといわれる弁護士を、市民がより身近に感じてくれるようになることを法律相談センターでは期待している。 |
司法の拡充へ一石 |
これまで、横浜市や神奈川県などの自治体で行われてきた無料法律相談は、担当弁護士が一般的な相談には応じるものの、相談者からの依頼があっても、自らが事件を受任することはできないことになっていた。 |
このため、弁護士を頼みたい相談者に対しては、当会の法律相談センターを紹介することになり、改めてセンターで相談の予約を入れるか、窓口で弁護士の斡旋をしてもらう方法をとらざるをえなかった。 |
市民にとっては、自分が気に入った弁護士に頼むことができないうえ、今度は有料の相談を受けなければならず、さらに同じ話をまったく別な弁護士に繰り返すという煩わしさもあって、司法への接近を阻害するものという意見が以前から会内にも存在していた。 |
相談担当者の受任を禁止していたのは、市民が自治体が弁護士を斡旋したものと誤解してしまうことを避けるためであったが、司法を身近なものにという最近の議論の中で、自治体も弁護士会も、法的サービスの提供へ向けて一歩踏み出したと評価することができよう。 |
斡旋を活用 |
受任の手続は、相談者が担当した弁護士に頼みたいと希望した場合、法律相談センターにその旨を伝え、同センターを通したうえで弁護士へ本人から連絡をとることになっており、いわゆる『斡旋』の方法によることになっている。従って、センターでの相談から受任した場合と同様に、委任契約書等の提出も義務付けられている。 |
受任が可能になったといっても、それは担当してくれた弁護士に依頼することを禁止しないとすることにとどまっているものであり、自治体が弁護士を紹介したと誤解されないように、相談の場所で直接受任することは、これまで通り禁止されている。 |
なお、この斡旋型の受任制度は神奈川県と横浜市以外ではまだ実施されていないので、他の自治体で行う法律相談では、依然、受任は禁止となっていることに注意する必要がある。 |
法律相談センターでは、最近激増する多重債務者の相談に対処するため、この種の問題を専門に扱う相談窓口「多重債務処理センター(仮称)」を開設することにした。これまでにも法律相談センターや消費者相談などで債務整理の相談を受け付けていたが、予約が一週間以上も先になることが多く、相談者の希望に充分こたえられていない状況となっていた。 |
具体的な業務は、本年の一二月一日からの開始を予定しており、弁護士会館において毎日午前九時四五分から一一時四五分までの二時間、三〇分刻みで一日あたり一二人の相談を受ける体制をとることになり、一か月間では約二四〇人の債務整理が新たに可能となった。 |
多重債務処理センター設立の責任者である武井共夫法律相談センター運営委員会事務局長は、「東京の四谷法律センターや神田センターなどに、神奈川在住の人が多く訪れており、当会の対応が遅れていたことが気になっていたが、これでようやく責任が果たせます。」とほっとした笑顔を見せていた。 |
(法律相談センター運営委員会委員 松井 宏之) |
-遅刻・早退はできません!- | ||||||||||||||||||||||||
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倫理研修会は横浜弁護士会においてはすでに、三巡目に入っています。昨年からは日弁連においても倫理研修受講が義務づけられていますが、当会では会独自の規定により、日弁連の規定よりも受講頻度が多くなっています。 | ||||||||||||||||||||||||
当日は、理事者から綱紀・懲戒・苦情に関するご講義をいただき、その後参加対象者代表のパネリストによるパネルディスカッション形式で進める予定です。取り上げる事例は真実と異なる依頼者の主張の問題、刑事弁護における接見交通権の問題、相手方からの利益供与の事案を予定しています。研修委員会としては当日の議論を重視して取り組んでいます。発言がとぎれると司会から指名して発言をお願いすることもありますが、その点はご容赦ねがいます。ただ、例年議論が百出し、だいたい時間が足りなくなりそうになるのがむしろ辛いところ。今年も活発なご討議をお願いします。最後に研修委員長より各設問についての所見を発表します。 | ||||||||||||||||||||||||
(研修委員 中村 宏) |
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