初めてあっせん・仲裁人を担当し、和解が成立した事例を紹介したい(内容は少し変えてある)。 |
事案は、A子からB男に対する婚約破棄に基づく慰謝料など400万円の損害賠償請求事件であった。申立前、A子がB男方に押しかけたりして2人の間がもめていた。 |
B男の答弁は、性格の不一致による破談であって賠償義務はないが、解決金としてなら、130万円を月1万円の分割で支払うつもりはある、というものだった。A子の怒りが大きいのに対し、半額以下で、しかも月1万円の分割ではとうてい合意は無理だと思えた。 |
しかし、不調により裁判を起こしても、時間も費用もかかるし(破綻原因も争われる)、賠償額も下がるであろうし、給料差押えにより結局は分割払いになってしまうことが予想されたので(B男に財産はなかった)、あまりA子にとってプラスは考えられなかった。そのため、A子の憤りの気持ちや訴えに時間をかけて耳を傾けるとともに、和解の場合は判決と同じ効力のある和解的仲裁判断を出す形を取りたい旨を説明し、A子に考えてもらった。 |
他方、B男は、不調によるA子とのトラブルを心配していたので、金額を上げるとともに分割回数を減らして、この手続の中できちんと話をつけた方が良いのではないか、とアドバイスをした。 |
その結果、第3回期日で、B男が一たん請求額全額を認めた上で、その内の250万円を月5万円ずつの分割で支払うという内容の和解的仲裁判断を出すことができた。 |
あっせんの申立をするケースでは、法的手続を取るのに難しい点があったり、裁判や調停よりも早期の解決を求めていることが多いように思われる。従って、「和解はとても無理だ」と思われるケースでも、あきらめないで当事者の利益を考えてじっくり話を聞いていくことによって、解決に至ることも多いはずである。そのことをこのケースは教えてくれた。 |
法科大学院支援委員会委員 藤村 耕造 |
昨年から今年春にかけ、横浜国大、関東学院大の法科大学院が、横浜弁護士会の協力のもと、エクスターンシップが始動した。 |
今回は9月5日から横浜国大、桐蔭横浜大学、12日から神奈川大の合計約60名の学生が、本部、川崎、小田原の会員事務所に配属され、5日間の実務研修を行なった。指導担当を快く引き受けていただいた会員の皆様に深く感謝の意を表したい。 |
担当された会員からは、「実務を吸収しようという意欲が感じられた」「事案を正確に把握していた」と好意的な評価が寄せられ、「弁護士活動を大雑把に理解してもらえたのではないか」「今後の勉学の一助となれば幸いである」等の感想をいただいた。 |
今回私は既習者コース、未習者コース各1名の指導を2週間連続で担当することになった。 |
既習者コースの学生には、医療事故訴訟の打ち合わせに立ち会ってもらったが、彼はすでに法科大学院で医事法の講座を受講し、ある程度の前提知識を備えていた。また、彼は従来の司法試験受験者が苦手としていた親族法、家事審判手続などにもある程度通じていて驚かされた。 |
一方で未習者コースの学生は、他学部出身で社会人経験もあり、法科大学院で初めて法律を学び始めたそうだが、事実認定の場面で鋭い分析能力を示してくれた。 |
今回の指導経験を通じて得たものは、従来と一風変わったタイプの法律実務家が生まれてこようとしているという実感である。 |
理屈では前からわかっていたことだが、実際にそうした学生と接してみてあらためて新鮮な感覚を持った。 |
人が変わり、システムが変わったとしても、マンツーマンの実地研修でなければ伝えられない技術、精神があることに変わりはない。 |
これは倫理、実務の水準を維持する上で欠かせない。こうした観点から、会員各位に、エクスターンシップに今後とも協力いただければ幸いである。 |