横浜弁護士会新聞

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2004年7月号(2)

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元気印のひと
横浜市人事委員会
井上 嘉久 会員
準司法的権限と行政権限
 横浜市人事委員会は、主として、任命権者と職員の間に紛議が生じたときにこれを裁定する準司法的権限と、給与・勤務時間その他の勤務条件、職員に関する制度についての研究を行い、その成果を任命権者、横浜市議会に提出すること等の行政権限を有している。
人事委員会の構成
 人事委員会は、3人の委員で組織され、委員は非常勤で、議会の承認を得て市長が選任し、任期は原則として4年である。委員の出身母体は行政OB、経済界及び弁護士会という構成であり、弁護士出身の委員が委員長を務めるのがこのところの通例である。事務局は、事務局長を頂点として、調査課と任用課に事務分掌され、20名の職員で構成されている。
原則全員出席の定例会
 当委員会の定例会は、毎週水曜日の午後2時から開催され、委員長が会議の進行を主宰する。今国会で会議の開催要件が、原則委員全員出席に改正されたが、改正前は、委員全員の出席が絶対数開催要件とされていたため、入院先の病院から定例会に出席した委員もいたという話が語り継がれている。
夏休みも返上
 また毎月9月には市長、市議会議長に市職員の給与に関する報告、勧告をなすという重要な任務を迎えるため、8月にはお盆休みも返上で会議が継続される。その他にも不利益処分の不服審査、勤務条件についての措置要求の審査については、個々の案件に対してほぼ裁判官と同様の役割を果たすことになる。また委員長には市議会本会議への出席義務があり、全国人事委員会連合会、大都市人事委員会連絡協議会等への出席が要請されている。委員の報酬は、条例で月額36万2000円と定められている。
重要な責務
 激務ではあるが任命権者の人事権の行使をチェックし、適正な人事を実現するという人事委員会に課せられた使命は極めて重要なものであり、委員、職員一同、誠実に職務に精励している。

いよいよ始まった法科大学院その5 学生の睡眠時間は3時間
横浜国立大学法科大学院助教授 杉原 光昭
 私はこの4月から、横浜国立大学大学院国際社会科学研究科法曹実務専攻(これがこの大学院の正式名称である)の助教授、所謂ロースクール実務家教官として、法曹教育に参加することになった。私の担当科目は、単独で授業を行う民事実務演習と、研究者教官や他の実務家教官と共同で授業を行う民事訴訟演習、民事模擬裁判、法律相談で、2年生・3年生を対象とした授業である。そして、私の授業が実際に始まるのは、今年の12月からであり、今年度は、一定水準の法律基礎知識を備えた学生、即ち既修者(既修者は飛び級で2年生の授業から受講。今年度は11名)に講義をすることになる。そこで、私は、既修者の知識、学力がどの程度のものなのかを認識するためと、自分自身錆び付いてしまった学説理論を再構築するため、現在、週3回、研究者教官が行っている民法演習と民事訴訟法の授業に参加させてもらっている。又、未だ一定水準の法律基礎知識を備えていない学生、所謂未修者(今年度は39名)を含めて、学生たちの民事法系の勉強に少しでも役立つことができれば、と考え、時間の許す限り、研究室や談話室などで学生に接し、自分が過去にやってきた勉強方法、実務家からみた法律問題へのアプローチの仕方などを話している。彼らと接して感じることは、学生たちが皆、授業に熱心に取り組んでいることである。反面、学生たちの負荷は想像を絶する。なにせ、授業では常に予習・起案が要求されるし、又、非法学部出身者(完全未修者)にとっては、我々が数年かかって勉強した法律基礎科目を1年間で習得し、それを前提として2年目からは、現在の司法修習生が司法研修所で習っているような実務を習得してもらおうというのだから。それ故、学生たちの平均睡眠時間は3〜4時間とも言われている。この点は今後の課題として検討されるべきであろう。それはさておき、大学院で学生たちと話をしている時の彼らの生き生きとした眼差しを見るとき、私は、「ここへ来てよかった。」と幸福感を感じるとともに、「何とか、そして少しでも彼らの役に立ちたい」という強い衝動に駆られ、大学院から事務所に戻って本来の自分の弁護士業務をすることにためらいを感じてしまうのである。

子どもの日 記念行事 学校教育は今
子どもの権利条約発効10周年を迎えて
 5月15日、当会の主催により「学校教育は今〜子どもの権利条約発効10周年を迎えて〜」と題する市民集会が開かれた。参加者は一般28名、弁護士20名(うち1名は大阪弁護士会会員)の合計48名であった。
 主なプログラムとしては、養護学校現役教諭である布川百合子氏の講演「養護教諭から見た子どもの抱える悩み」を初めとして、栗山博史会員による「子供の権利条約第2回政府報告書国連審査の報告」、当会会員有志によるコント「実録!たくましい日本人育成特別クラス選抜テスト」、関守麻紀子会員による「教育基本法『改正』ポイント解説」が行われた。
 いずれも非常に充実した興味深い内容であり、特に布川さんが養護教諭歴34年という豊富な経験に基づいて語った学校現場の実情は、子どもを巡る法律問題に携わる弁護士にとって、大変示唆に富んだ有意義なものであった。
(田口幸子会員)

清水規廣会員 日弁連副会長就任激励会
新たな決意と温かい眼差し
 5月10日、横浜ロイヤルパークホテルにて、清水規廣会員の平成16年度日弁連副会長就任激励会が盛大に行われた。
 清水会員からは、日弁連が在野におけるシンクタンクとして立法の過程において益々重要な存在となっていることを実感しているという感想が述べられたほか、霞ヶ関でふと孤独を感じる瞬間に横浜弁護士会のメーリングリストの存在に勇気付けられることがしばしばあるといううれしい話もあった。
 毎週木、金、土曜日の3日連続で午前9時30分から午後5時までの会議が入るという激務をこなしているが、霞ヶ関に向かう電車内で中国語講座を聴く時間が何よりの息抜きとのことである。
 激励会では多数の参加会員から激励の言葉が送られ、池田忠正会員からは

真清水の  清きに集う  人あまた

という俳句も披露された。
 清水会員の新たな決意とそれを包み込む当会会員の温かい眼差しが印象的なひとときであった。

市民とともに学ぶ公開学習会 有事7法案とイラク派兵
 5月6日、前田哲男東京国際大学教授を講師に迎えて、公開学習会が開催され、市民、当会会員など約40名が参加した。
 前田教授は、有事7法案及び3条約について、米軍支援措置法を中心とした構造に置き換えて読み解く必要があると述べた。また、厚さ15センチはあるかと思われる法案資料を示した上、内容もさることながら、分量としても大部であることを指摘した。
 このような指摘を受け議論をするのに決して拙速であってはならないとの感を強くした。
 講演後の質疑応答も活発であり、我々の生活の根本にも関わる問題に法律家として意見表明していくことの必要性を強く感じた。
(関守麻紀子会員)

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