そんな毎日 |
第55期修習生 井上 順之( |
四月五日金曜日。初めて接見に同行する。不謹慎ながら「二時間ドラマみたいだな」などと思ったりする。そこで先生が私を被告人に紹介して曰く「修習生には守秘義務というのがあってね、この人は、たとえ拷問にかけられてもここで話したことを他に喋ったりしませんから、安心してください」とのこと。守秘義務について被告人にも分かりやすく、かつ非常に端的に伝えられたなあ、と感心。であるから、私は今、じゃんけんに負けたばかりに顔写真付でこんな原稿を書かされるという拷問を受けているが、めったなことを書くわけにはいかない。従って、この原稿が具体性に欠けた面白くないものであっても、それは守秘義務のせいである。 |
四月一〇日水曜日。先生は大変忙しい方だが、この日のスケジュールは特に、熱海簡裁と東京地裁で法廷というタイトなもの。私は熱海に簡裁があることすら知らなかった。なにせ熱海であるから、「宇奈月温泉事件」とか「鷹の湯温泉権事件」みたいな事件がゴロゴロしていると面白いのだが、かかっていたのはクレサラ事件だった。この日は新幹線を筆頭にさながら乗り物乗り放題デーの様相を呈していたが、感想は(1)新幹線は速い(2)「こだま」はなかなか来ない(3)乗り物に乗り続けると疲れる。修習生は横でぼんやりしていればいいので(いいのか?)まだしも、先生は訴訟活動もしなければならないので、そのご苦労のほどがしのばれる。 |
四月二二日月曜日。かなり長く続いている損害賠償請求事件の最終準備書面の起案をいただき、先生と事務所を出たのは八時半頃となった(真面目に修習していることもアピールしておかなくては)。しかし先生は、急遽の電話を受けさらにこれから川崎の依頼者宅に向かうとのこと。先生は「私はワーカホリックですから」などと謙遜されるが、依頼者を大事にするその姿勢は、私が弁護士になっても是非見習いたいものだと感服した。 |
そんな弁護修習の毎日である。 |
(指導担当 黒木泰夫会員) |