横浜弁護士会新聞

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2001年8月号(2)

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 去る六月八日午後五時三〇分から当会館において、第四回民事裁判懇談会(民裁懇)が開かれた。裁判所・弁護士会双方の代表者による協議会から誰もが参加できるオープンな懇談会形式に改められた民裁懇も今回で四回目となり、すっかり定着した感があるが、今回も裁判官二七名、書記官一四名、そして弁護士五一名と多数の参加を得て盛会となった。
 はじめに、弁護士会より國村武司会員が前回の民裁懇から引き継いだテーマである鑑定と和解に関して問題提起をなし、次いで裁判所から志田博文裁判官が新たなテーマとして、最終準備書面について問題を提起するレポートを発表した。さらに、前回の民裁懇での鑑定と和解についてのレポートも踏まえて、これらに関する質疑応答と意見交換がなされた。
 ときおり会場の笑いを誘う発言も見受けられるなど、終始和やかな雰囲気の中ではあったが、和解については、裁判所の方から「当事者以上に当事者化して事件の道筋を見ようとしない代理人も時折見受けられる」「(和解案について)弁護士としての本音の意見をもっと聞かせてほしい」といった意見が出れば、弁護士会の方からも「両当事者に正反対の心証を開示した上で和解を勧められたことがあるがいかがなものか」「依頼者本人のいる席といない席とでは弁護士の立場が異なることを裁判官にもわかってほしい」などの意見が出された。鑑定については、鑑定の公平性確保の点を中心に、鑑定人の選任方法や鑑定事項の決定方法、及び鑑定費用の負担について現状報告と意見交換がなされた。
 なお、今回の民裁懇の具体的内容は、後日まとめて会員に報告する。
 次回は、今秋を目途に、裁判所の方から提案されている弁護士による争点整理案作成の是非、最終準備書面等について意見交換を行う予定である。
 法服を脱いだ裁判官、書記官の生の声が聞ける貴重な機会。ぜひ次回も多数のご参加を。
(民事裁判手続運用委員会  吉川 知恵子)

弁護士としての私を成長させてくれた住民運動
 私は、横浜修習で青法協活動でお世話になったこともあり横浜合同法律事務所に就職しました。当時の横浜合同事務所には、故岡崎一夫、故山内忠吉、畑山穣、川又昭、岡村共栄、吉村駁一、谷口隆良といった先生方がおられました。私は、岡崎先生の後について調停事件等に出掛けていましたが、吉村先生が群馬の郷里に帰ることが決まっていたので、その事件を先輩弁護士の指導のもと引継ぎ、一人で法廷等を駆けずり回っていました。吉村先生は、依頼者からの信頼も篤く弁護士として依頼者の信頼を得ることに苦労をしました。
 横浜合同には一年しかいませんでしたが、事件を処理する姿勢について、大きな影響を受けた思いがします。
 二年目に、同期で事務所を開設していた小林章一(現在一弁に所属)、平岩敬一両弁護士が、私を事務所に迎え入れてくれることになりました。私が独立した頃とは、この時のことをいうのでしょう。横浜合同の好意で担当していた事件はそのまま行うこととなりましたので、当面生活には困りませんでした。当時、国鉄が通勤ラッシュ緩和のため東海道線を複々線化し、静かな住宅地に貨物線を通す所謂横浜新貨物線の建設反対運動が活発に展開されており、訴訟が始まっていました。私が独立したことを知って、宮代洋一弁護士から、毎月定額の費用が支給されるので同弁護団の事務局長に就任しないかとの誘いがありました。宮代弁護士の巧みな説得のお陰で、以後およそ一〇年間にわたってその訴訟と関係することとなりました。その弁護団は、宮代弁護士の外陶山圭之輔、木村和夫、小林章一、岡田尚弁護士の錚々たる弁護士で構成されていました。土地収用委員会での審議や運輸省に対する異議申し立て、訴訟も差止訴訟や事業認定取消訴訟等バラエティに富み、大変ではありましたが、随分成長したようにも思います。そこでの経験が良くも悪くも今日の弁護士の基本となっているように思えます。まだ私を信頼して相談に来てくれる当時の関係者がいますが有り難いことと思います。無我夢中で仕事をしていた当時が大変懐かしく思えますが、年をとったということでしょうか。
 振り返ってみると、私が一番影響を受けたのは、横浜合同時代の故山内忠吉先生であったように思います。先生はどんな事件も分け隔てすることなくこつこつと誠実に対応されていました。また後輩弁護士に対しても、何時も暖かい目でじっと見守る姿勢を崩されたことがありませんでした。
 私はとても足下にも及びませんが、先生を師として、生涯一弁護士の気概をもって過ごせたら良いなと考えています。関内法律事務所から独立した時は、豊島昭夫先生にも一方ならずお世話になりました。いわば第二の独立ということですが紙数の関係で、今回は割愛することとします。

−役立つ判例をコンパクトに解説−
 六月二〇日午後三時より、当会館五階において平成一二年度民事重要判例研修会が行われた。
 当会会員多数が参加し、二時間にわたり講師である新堂幸司氏(第二東京弁護士会会員)の講義に熱心に耳を傾けた。
 平成一二年度重要判例として取り上げられたものは二〇件で、その内容も訴訟の手数料から株主代表訴訟まで幅広いものであった。
 その中には、抵当不動産の賃借人が有する転貸賃料債権に抵当権者は物上代位権を行使できるかが争われた事案や、信用金庫の貸出稟議書は会員の代表訴訟においても「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たるかが争われた事案などで代理人に当会会員の名前も見受けられ、その意味でも大変興味深いものであった。
 最新の重要判例は、法律家ならば当然押さえておくことが求められるが、日常の多忙さに流されてつい後回しになってしまいかねない。
 本研修のように、一年に一度、民事の重要な判例をまとめて集中的にフォローできる機会は、大変貴重である。
 来年度も本研修が引き続き開催され、より多くの会員が参加されることを期待したい。

10月の新法施行にむけて
 六月一四日、本年四月に成立し一〇月から施行される「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(いわゆる「DV防止法」)についての研修会が横浜市中区女性福祉相談員の池葉喜代子氏、斉藤秀樹会員を講師に招き当会館五階会議室で行われた。
 当日は雨の中三〇名を越える会員の参加があり、この問題に関する関心の高さがうかがわれた。
 池葉氏からは、相談員として接した経験を基に、被害は受けたくないものの帰る場所が他にないといったDV被害の実態や、新法施行前の被害者支援体制、施行後の支援体制構築における問題点等について報告がなされた。
 続いて斉藤会員からは、新法の眼目である保護命令(地方裁判所が加害者たる配偶者等に対し、接近禁止や住居からの退去を命ずるもの)の内容を中心とした講義が行われた。
 新法の詳細は規則の制定に委ねられていることから、この法律が実効性を発揮できるか否かについては施行後どのように本法を利用するかにかかっていると言えよう。
 また、研修会修了後に、人権擁護委員会両性の平等部会長の渡辺智子会員よりDV相談担当弁護士名簿登載会員数が四〇名程度に達したとの報告があった。同部会では引続き名簿登載会員の募集を続けるとのことである。

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