(財)法律扶助協会神奈川県支部では、年間二〇〇件を超す被疑者弁護の申込みがある(平成一二年度の実績は二四六件、同一三年度は二六五件を予定している)。その申込の中には、これはいかがかと思われるものが時々ある。 |
いわく。若干のお金がないではないが、示談金に用いたいので扶助の申込みをする。覚せい剤を買う金はあり、そのために逮捕された者であるが、扶助の申し込みをする。出資法違反で勾留中の貸金業者であるが、扶助の申し込みをする。 |
民事事件と同様刑事事件にも資力要件はあるが、迅速な刑事弁護活動をするため、その審査は甘くなっている。民事事件の場合は、資力が少ないことを疎明するため、例えば給与明細書等の提出を要求しているが、刑事事件の場合には、申し込みを代行した弁護士の裁量に委ねられている。 |
ところで、民事扶助法の成立により、刑事事件は、各支部の独自事業となった。つまり、二〇〇件を超す刑事被疑事件に対する支出は、神奈川県支部の負担となったのである。同支部の刑事被疑者弁護人援助事業実施要領によると、援助金額は費用及び着手金として一〇万円を原則とする、と定められているから、日弁連等からの補助金一件につき六万円を控除しても(一〇万円−六万円)×二〇〇(件)=八〇〇万円以上の負担となる。それは、前記実施要領で「原則として交付制とし、償還は求めない」とされているからである。 |
交付制を原則としたのには、いくつかの理由がある。経済的負担をかけることによって、被疑者が刑事弁護を依頼することを躊躇するのではないか、償還制を導入することによって事務局の負担が増大するのではないか等である。 |
しかし、以上の理由も、われわれ担当弁護士(大多数は当番弁護士であろうが)が、今少しの努力をすれば克服可能なものである。接見時において神奈川県支部の実情を話し、「支部に対し立て替えた弁護士費用の全部または一部を可能であれば返してもらいたい」と話し、当該弁護士の方で、回収すればよいのである。勿論交付制にしなければならない事案もあろう、回収が困難な事案もあろう。しかし、仮に二〇〇件のうち半分の一〇〇件について償還できるのであれば、一〇〇〇万円の収入増となり、赤字を補うだけでなく、剰余金については、例えば通訳費用等にあてることが可能となるのである。 |
是非とも償還の活用にご協力をいただきたい。 |
(法律扶助協会神奈川県支部審査員長 山本一行)
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小川直人会員が裁判官に |
横浜法律事務所に所属していた小川直人会員(四八期)が任官し、一〇月一日から東京地方裁判所第九民事部で勤務を始めた。当会会員が任官したのは小川会員が初めて。 |
―裁判官になることを決意したのは何故ですか? |
私の妻は裁判官ですから転勤があります。保育園に通う二人の子供もいるので、これからも家族一緒に生活していくことを重視しました。また、これまで私としても出来るだけ家事を分担しようとしてきましたが、どうしても妻の方に家事の負担が偏りがちでした。こういう状態をあまり続けるべきではないと思いました。裁判官の仕事に対する興味もありました。 |
―弁護士の仕事を辞めることについて迷いはありませんでしたか? |
私は、弁護士としての仕事に入れ込んでいました。自分でも弁護士向きだと信じていましたから、最初に任官の話があった時も、裁判官になる訳ないと思っていたくらいです。随分と悩み逡巡した上での選択です。 |
―弁護士としての事件はどう処理したのですか? |
辞める一年位前から新件は取らないようにし、どうしても引き受けなければならない時は、同僚弁護士との共同受任として後を引き継いでいただく準備をしてきました。最終的には一人だけで受けていた事件が三件残りましたが、それも同僚弁護士に引き受けていただきました。 |
―経済的な面で不安はありませんでしたか? |
裁判官になってからの収入面の不安はありませんでした。むしろ辞める直前に仕事を減らしていく時が心配でしたが、トントン位の収支で終えることができました。 |
―裁判官の仕事の感想は? |
もともと良くも悪くも弁護士タイプと思っていましたので、裁判官に向いているのだろうかという不安はありました。 |
しかし、現在では新しい知識を得、今までになかった経験をし、弁護士の時とは違った立場から事件を見ることができるので、毎日が非常に新鮮です。弁護士の時は毎日同じ裁判所に居ることなんて耐えられないと思っていましたが、苦痛には感じません。 |
―所属している裁判所の印象を教えて下さい? |
東京地裁民事第九部は保全部ですが、若い裁判官がたくさんいて、言わば大部屋です。皆さんフランクで、色々なことを気軽に相談できる非常にいい環境です。 |
―裁判官になって生活が変わった点はありますか? |
以前は、子供が起きている時に帰宅することはほとんどなかったのですが、子供と一緒に夕食をとれるようになりました。保育園に子供を迎えに行くこともあります。それからあまりお金を使わなくなりました。 |
―横浜弁護士会会員に向けて一言お願いいたします。 |
私は修習生として、また、委員会活動や事件を通じてたくさんの先輩方や同期、所属事務所の同僚弁護士のお世話になってきました。本当にありがたいと思っています。 |
私は所属事務所の全面的なバックアップを受けていたので、スムーズに裁判官になることができました。 |
しかし、大きな事務所ばかりではありませんので、もっと任官者を増やすためには、弁護士会が任官希望者をバックアップする体制が不可欠だと思います。 |
任官したばかりのフレッシュな感想をお聞きしました。 |
(インタビュアー 安田英二郎)
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